研究概要 |
炭素数が60以上の長鎖脂肪酸を有する,結核菌の細胞表層糖脂質TDMは,免疫活性化に基づく抗腫瘍活性を有しており,大阪大学山村一門を中心にこれまでに非常に多くの研究が行われてきたが,高い毒性の故に遂に実用化されることはなかった.最近,本研究者らは,鎖長が短いジフテリア菌由来の糖脂質TDCMの,二つの不斉中心に関する全ジアステレオマー(RR体,RS体,SR体,及びSS体)を不斉合成し,天然物がRR体であることを証明すると共に,非天然物であるSS体が,天然TDMと同等以上の強力な制がん作用,及びがん転移阻害作用を示す一方で,極めて毒性が低いことを明らかにした.この結果をもとに,この3年間徹底した誘導体合成と,活性評価を行い,これらの化台物が低分子化合物では初めてのIL-6増強活性物質であることを突き止め,in vitroのアッセイ系の確立にも成功し,IL-6増強活性物質の新合成法に関する特許の申請に漕ぎつけ「トレハロース化合物を用いたインターロイキンー6増加剤およびその製造方法」(特願2004-079305),前例のない,免疫活性化に基づく制がん剤の開発を明確に視野に捕らえた.また本合成研究の基礎となる新反応の開発に努力し,水銀トリフラートを触媒とするアルキニルケトンの環化反応による2-メチルフランの合成,生合成類似の触媒的タンデム環化反応を開発した.
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