研究概要 |
好中球は生体に侵入した細菌を貪食し、活性酸素を発生して殺菌する。活性酸素発生はNADPH酸化酵素とよばれる酵素が担っている。NADPH酸化酵素は膜酵素であるCyt b_<558>(gp91^<phox>とp22^<phox>)と細胞質因子p47^<phox>,p67^<phox>,p40^<phox>および低分子量Gタンパク質Racより構成される複合酵素である。貪食シグナル(アラキドン酸刺激やリン酸化)に応じて、細胞質因子複合体の構造変化が誘起され、RacとともにCyt b_<558>に結合する。Cyt b_<558>は細胞質因子が複合体を形成することで活性状態となり、活性酸素を発生する事が可能になる。このように好中球活性酸素発生系は多段階の活性化機構を有し、構成タンパク質間の相互作用を介して厳密に制御されている点が特徴である。この中で、p47^<phox>に含まれるタンデムSH3が刺激により閉構造より開構造へと変化し、Cyt b_<558>の構成成分であるp22^<phox>のプロリンに富む領域と結合することが活性化の最初のステップと考えられている。我々はp47^<phox>の閉構造のモデルとして自己阻害領域を含むタンデムSH3(p47^<phox>(151-340))の構造をX線結晶構造解析を用いて解析した。自己阻害領域がタンデムSH3ドメインとリンカーを束ねた球状構造をとることを明らかにした。SH3ドメインのプロリンに富むペプチド結合領域は自己疎外領域が結合しているため、p22のプロリンに富むペプチド領域とは結合できない。ついで、活性化モデルとしてタンデムSH3ドメイン(151-286)とp22ペプチド複合体の構造をNMR法により明らかにした。p22ペプチドのプロリンに富む領域を二つのSH3が挟み込むようにして結合し、強固な複合体を形成していた。閉構造より開構造への変化には自己阻害領域のリン酸化により、構造が順次緩み、最終的に開溝造をとるという活性化機構を提案した。
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