研究課題
基盤研究(A)
切断された神経軸索は神経成長因子(NGF)存在下で再生することが知られている。我々はこれまでに蛍光色素Cy3で標識したNGFを1分子イメージングする技術を使って、成長円錐におけるNGFの受容と成長円錐の運動反応の連関や、NGFと受容体の複合体形成に引き続く細胞内への取り込みの過程を、NGF1分子単位の精度で明らかにしてきた。そこで、本年度は神経軸索の再生過程とNGFの受容、取り込みの関係を調べる実験を開始した。ニワトリ7日胚から脊髄後根神経節を取り出し、ポリリジンコーティングしたカバーガラス上で2pMのNGFを加えて一晩培養した。神経節から多くの神経軸索が伸長する。カバーガラスで作製したガラスナイフでこの神経軸索を一気に数十本切断し、微分干渉顕微鏡で神経軸索の再生を観察した。神経軸索の再生には、NGFの添加が必須であることやRNA合成阻害剤の添加によって再生が阻害されることなどを確認した。次に微小ガラス針を使って神経軸索を一本ずつ切断し詳しく観察した。観察の結果、再生までの過程は切断後30分以内に神経軸索の切断部先端に小さな塊ができ、そこから成長円錐が再生した後に神経軸索の再生、伸長がおこっていることがわかった。神経軸索の再生には成長円錐の再生が不可欠で、成長円錐のNGFを取り込む機能が神経軸索の伸長に重要だと考えられる。このことから、再生に伴い、成長円錐のNGFを取り込む機能がどのように獲得されていくのかが今後の課題である。そこで今後の研究方針としては、蛍光標識したNGFを用いてこれらの再生過程のメカニズムを調べていく予定である。
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