クロマチンのリモデリングとエピジエネティクス

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14208086
• 研究機関: 国立遺伝学研究所
• 研究代表者: 広瀬 進 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 教授 (90022730)
• 研究分担者: 西岡 憲一 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 助手 (80370120) ; 上田 均 国立遺伝学研究所, 個体遺伝研究系, 助教授 (60201349)
• キーワード: クロマチンリモデリング / エピジェネティクス / GAGA因子 / SSRP1 / SPT16 / FACT / Hox遺伝子 / ショウジョウバエ

研究概要

1.遺伝学的解析からGAGA因子-FACT複合体が発現維持に関与することが判明したUbxとAdb-B遺伝子の調節領域であるbxdやiab-6に、GAGA因子とFACTが存在することをクロマチン免疫沈澱法を用いて示した。
2.white遺伝子の発現をめぐるposition effect variegation(PEV)に注目して遺伝学的解析を行った。その結果spt16遺伝子の変異によりPEVが亢進すること、GAGA因子をコードするTrl遺伝子とSpt16遺伝子の二重変異ではPEVがさらに亢進することを明らかにした。これらの結果は、GAGA因子-FACT複合体が確かにエピジェネティックな遺伝子発現に関わることを示すものである。
3.Flag GAGAを発現しているtransgenic flyから、より生理的な条件でFlag GAGAを回収することにより、GAGA因子とクロマチンリモデリング因子であるBrahma複合体が相互作用していることを見出した。
4.ショウジョウバエ超らせん化因子(SCF)の活性をRNAiにより個体レベルでノックダウンしたところ、雄特異的に致死となった。さらに、scf遺伝子とmsl(male specific lethal)遺伝子の間に遺伝学的相互作用が観察され、SCFがX染色体量的補正に関わることが明らかとなった。ショウジョウバエでは、雄で1本しかないX染色体上の遺伝子発現を約2倍活性化することにより、量的補正がなされている。従ってこの結果は、SCFが活性クロマチン形成に関わるという我々の考えを強く支持している。

研究成果

• [文献書誌] Shimojima, T.: "Drosophila FACT contributes to Hox gene expression through physical and functional interactions with GAGA factor."Genes & Development. 17. 1605-1616 (2003)
• [文献書誌] Saunders, A.: "Tracking FACT and the RNA polymerase II elongation complex through chromatin in vivo"Science. 301. 1094-1096 (2003)
• [文献書誌] He, S.: "Facile synthesis of site-specifically acetylated and methylated histone proteins : reagent for evaluation of the histone code hypothesis"Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 100. 12033-12038 (2003)
• [文献書誌] Sims, R.J.3rd: "Histone lysine methylation : a signature for chromatin function"Trends in Genetics. 19. 629-639 (2003)
• [文献書誌] Nishioka, K.: "Methods and tips for the purification of human histone methyltransferases"Methods. 31. 49-58 (2003)
• [文献書誌] Hamada, K.: "Identification of the human IAI.3B promoter element and its use in the construction of a replication-selective adenovirus for ovarian cancer therapy"Cancer Research. 63. 2506-2512 (2003)