1)マウスのES細胞はFlk-1陽性の血管前駆細胞に分化したあと、VEGFの作用の有無により、血管内皮細胞や血管平滑筋細胞に分化する。血管内皮細胞と平滑筋細胞が共存する条件では潜在型TGF-βが効率良く活性化されることが知られている。この系においてTGF-βレセプターキナーゼの抑制剤であるSB-431542を添加したところ、血管内皮細胞の増殖とシート形成が著明に促進されることが明らかとなった。血管内皮細胞ではタイトジャンクションの形成に関わるclaudin-5の産生がSB-431542によって著明に上昇し、細胞と細胞の境界に集積している像が観察された。 2)我々は、マウス間葉系前駆細胞C2C12とヒト間葉系幹細胞をBMP4で骨芽細胞へ分化誘導する系において、BMP4が内因性のTGF-βの作用を活性化してSmad6の発現を誘導し、その結果、Smad6がBMP4による骨芽細胞分化を抑制することを見いだした。SB431542は内因性のTGF-βの作用を抑制し、Smad6の発現を抑制した結果、骨芽細胞分化をBMP4と協調的に促進した。この結果は、TGF-βシグナルを制御することによってBMPシグナルを増強する可能性を示唆し、骨・軟骨再生医療に応用できると考えられた。 3)我々はヒト微小血管内皮細胞(HMEC)とES細胞由来血管内皮細胞に対してBMP4がその増殖を強く促進し、アポトーシスを抑制することを明らかにした。BMP4の標的遺伝子を解析した結果、BMP4はId-1やVEGFR2、Tie-2の発現を亢進させ、さらにこれらの受容体のリン酸化を促進することが明らかとなり、BMP4による血管内皮細胞増殖促進作用はVEGF-A/VEGFR2とAngiopoietin-1/Tie-2シグナル伝達系を介していることが示唆された。
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