完全な四肢再生能を持つ有尾両生類と、四肢再生能を殆んどもたない哺乳類の間で、無尾両生類は、四肢再生能に関して特徴的な位置を占めている。その一種であるアフリカツメガエルにおいては、幼生期には完全な四肢再生能を持つのに対し、変態とともに再生能は失われる。 ところが成体では、不十分ではあるが再生能が復活し、スパイクと呼ばれる捧状の軟骨が形成される。再生時のパターン形成に必要なシグナル分子を与えることによって、このスパイクに分岐、分節を行い、さらに筋肉組織を作ることによって、正常な四肢パターンの再生を目指した。得られた成果は以下の通りである。 1)スパイクを形成する再生芽にSHHタンパクを投与すると、末端で軟骨の分岐をしたスパイクが形成された。またこの再生芽にBMPタンパクを投与すると、軟骨の分節が形成された。軟骨の分節は、対照ビーズ投与群でも低頻度で見られたが、BMPの阻害剤chordinの投与で完全に抑えられた。またスパイク形成時にはBMPの発現は無いので、再生時のパターン形成ではBMPが分節過程に関与していると考えられる。 2)スパイクを再生する再生芽に植えた筋肉前駆体細胞は生存して、筋組織を形成する。肝成長因子を分泌する細胞塊を再生芽に移植することによって、スパイクに筋組織を形成させることができる。 これらの結果は、成体四肢のスパイク形成を完全な再生に近づけたものと考えられる。
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