研究概要 |
本研究では、体幹部の中胚葉組織の発生異常を示すメダカ変異体について、表現型の解析、原因遺伝子の同定を行った。また、初年度では、突然変異体を迅速に連鎖地図にマッピングするシステムも開発した。 1.変異体迅速マッピング法の開発:既存のESTマーカーから一定の基準を満たすものを選抜し,原因遺伝子の連鎖群特定を迅速に行うためのプライマーセット(M-marker)を構築した。これにより,ほとんどの変異体において一度の泳動操作のみで原因遺伝子の連鎖群を特定できるようになった(Kimura et al.,2004) 2.tacobo:詳細な表現型の解析の結果、tacoboはWntのPCP経路とWntのcanonical経路の両者に関与していることが判明した。従って、この変異はWntの2つの経路に共通する遺伝子に異常がある可能性が高い。すでに、positional cloningで1.2cMまで近づいているが、2つのwnt経路に関与する遺伝子(dshなど)のマッピングを優先して進めている。 3.toguro:高温において骨形成異常を示す、温度感受性変異体である。すでに、変異体領域をBACクローン3つまでに絞込み、これらのBACクローンの全塩基配列を決定済みである。この領域には10個程度の遺伝子が存在し、現在アンチセンス法などで絞り込みを急いでる。 4.headfish:発生の初期に尾芽形成異常を起こし、体幹部を欠損する変異体である。完全なpositional cloningの結果、この変異体の原因遺伝子はFGF receptor 1であることが判明した。この変異体ではヘパリン結合領域の保存されているアミノ酸一つが置換していた。この変異受容体の機能解析とFgfシグナルがどのように体幹部の形成に関与するかについて研究を進めている。 以上の様に、変異体から原因遺伝子を同定する技術的基盤が整い、短時間で原因遺伝子の同定が可能になりつつある。
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