研究課題
これまで、アトピー性皮膚炎の発症には、免疫系の細胞の関与が必須であるが、そのうちマスト細胞系列とT細胞系列が最も強く関与していると考えられている。しかしそのいずれが重要であるかについてはいまだ決着を見ない。研究代表者の米川らは、これまでヒトアトピー性皮膚炎のモデルと思われている近交系マウスNC/Ngaを用い、このマウスに皮膚炎を発症させる遺伝子座の探索を行い、その主要な遺伝子がマウス第9染色体上に存在するderm1であることを見出した。本研究では、このNC/Ngaマウスを主たる材料に使い、このマウスのT細胞系列、あるいはマスト細胞系列の細胞群等を、細胞群特異的プロモータを用いたTRECK法(後述)により、それぞれの細胞系列を個体内で任意の時期に抹消し、それらのマウスを用いた皮膚炎発症を観察することにより、皮膚炎発症にかかわる細胞系列が、T細胞系なのか、マスト細胞系なのかを明らかにすることを目的とした。TRECK法は、本研究班の班員の一人、奈良先端大の河野らによって開発された方法で、組織特異的なプロモータをヒトのジフテリア毒素受容体(ヘパリン結合性EGF受容体)の遺伝子に連結した後、このDNA組換え体をマウスに導入してトランスジェニック(Tg)マウスを作製する。その後、そのTgマウスが成長した適当な時期に、ジフテリア毒素をそのTgマウスに投与し、導入したプロモータが発現している細胞を特異的に破壊するという画期的な方法である。昨年度までに、マスト細胞、T細胞等にそれぞれ特異的なプロモータを用い、TRECK-Tgマウスの作製を行った。これまでの実験においては、BALB/c、SCIDマウスを用いた実験ではTRECK-Tgマウスの作製に成功し、また、NC/NgaによるTRECK-Tgマウスの作製も、Tgファウンダー獲得後のIVF(体外受精法)との併用において成功したが、まだいずれの細胞群がアトピー性皮膚炎の細胞群かを同定できたまでに至っていない。本研究は今年度を以て終了するが、終了後も責任細胞の同定についての研究引き続き行い決着を付ける。
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