研究概要 |
1.歯周組織再生における理想的な再生療法は,歯周靭帯と歯槽骨の再生がほぼ同時におこることである。しかるにGTR法などの実際の治療では骨再生が優先し,靭帯の再生はなかなか起こらないのが現状である。我々は,歯プレセメント質に歯周靭帯と歯槽骨をほぼ同時に再生する効果のあることを発見し,その有効成分を単離した。DEAE吸着画分をBSA除去後SDS-PAGEにて分離,バンドを切り出し,TOF-MASS分析をおこなった結果,トランスフェリン(69kDa)とαプロコラーゲンと同定された。市販品のトランスフェリンを用いてヒト歯周靭帯細胞の走化活性を調べたところアポ体が活性を示した。ヒト歯肉線維芽細胞に対してはアポ,ホロ両方に対して走化活性を示したが増殖活性は示さなかった。 2.治療において歯周組織再生因子の徐放化担体として,細胞の増殖分化の足場として,また手術の際にできた空間のスペース代わりとして,従来はウシ皮由来ゼラチンスポンジを使用してきたが,BSE問題で使用不可となった。代替物として人獣感染症の報告がない鮭皮コラーゲンの利用について検討を行った。鮭皮コラーゲンは変性温度が19℃と低く,ヒト体温ではゼラチンとなり再生治療用バイオマテリアルとして使用できないが,線維化と化学架橋を同時に行う方法を開発し,架橋後の架橋剤の成分が残らないEDCを用いて変性温度55℃のコラーゲン線維を作成することに成功した。本線維は従来の牛,豚由来のコラーゲン線維にくらべ平均太さ70nmと極細で均一であり,さらに強度は豚コラーゲン線維ゲルの5倍あった。歯周組織再生に関与するヒト歯周靭帯細胞,歯槽骨細胞,歯肉線維芽細胞すべてに対して豚コラーゲンの1.5倍の増殖性と分化促進活性を有していた。ラットへの埋込み試験の結果,生体親和性がみられ,炎症は認められなかった。ピーグル犬下顎の歯槽骨,歯根膜欠損モデルでの再生において正常な再生過程が観察された。
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