研究概要 |
力学的刺激を受けた血管内皮細胞が形態変化を起こす過程を明らかにするため,アクチンフィラメントと細胞膜上で連結している蛋白であるインテグリンに注目し,新しいテクニックを導入することによって流れおよび張力の刺激を与えた際のインテグリンの動きを観察,解析し,その役割を明らかにすることを目的とする. アクチンとGFP(Green Fluorescent Protein)の融合遺伝子,および接着班会合タンパク質であるFAK<Focal Adhesion Kinase)とRFP(Red Fluorescent Protein)の融合遺伝子を内皮細胞に導入し,アクチンフィラメントと細胞接着班を生細胞内で可視化し,流れ負荷に対するダイナミクスを詳細に観察した.流れ負荷装置は従来の平行平板型のものを使用し,2Paのせん断応力を負荷し、2〜10時間にわたる広範囲の時間で実験を実施した.その結果,焦点接着班の伸長,出現・消失,スライド運動が観察され,これらが内皮細胞のリモデリングに関して重要な役割を果たしていることが示唆された.焦点接着班の伸長方向とアクチンフィラメントの発達方向に相関が見られ,構造的に強く連結している様子も観察された. また,培養内皮細胞局所に異なるひずみを負荷できる装置を製作し,これを用いた伸展負荷実験によりリモデリング現象を観察した.装置としては,シリコーン膜内に剛性の高いカバーガラスを埋入してガラスの近傍にひずみ勾配を生じさせ,1個の細胞内に不均一ひずみ場を作製した.その結果,細胞内における局所的なひずみ勾配によってストレスファイバの局所的な、発達と核の偏位が観察された.このことから細胞は不均質なひずみ場を敏感に感知し,それを細胞内局所のリモデリングに反映させている可能性が示された.
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