研究課題
基盤研究(A)
本研究は、親潮域を中心とした西部北大平洋域で、水深500-1000mの「中層」、1000-3000mの「深層」に生息する主要な深海性動物プランクトン各種の生活史パラメターと現存量を連続野外採集によって把握するとともに、申請者の考案による簡易型保温コッドエンドを装着した閉鎖式ネットで‘生きている'深海性動物プランクトンを採集し船上実験室で代謝活性の測定と、凍結標本についての体化学成分(電子伝達系(ETS)酵素活性、核酸)の分析を行い、彼らの生理学的・生態学的特性を明らかにする目的で実施した。以下に得られた主要な結果を述べる。大型植食性カイアシ類で深海に潜って休眠するEucalanus、休眠しないMetridiaの生活史が明らかにされた。中・深層性動物プランクトン群集中、出現個体数で最も優占する体長1mm程度の貝虫類1種とポエキロストマトイダ・カイアシ類数種についてその個体群構造を1年間にわたって解析した結果、世代時間が1-2年と極端に長いことが判明した。彼らの中には、若齢期に上層に分布し、成熟すると下層に移動する個体発生的鉛直移動を行う種も見られた。産卵期は周年にわたるが主産卵期は植物プランクトンの春期ブルーム期とは関係なく、夏-秋であった。クラッチサイズ(抱卵数)は100個を超えることはまれで、表層種より少なく、生涯を通しての捕食圧が中・深層で低いことが伺われた。現存量は、同海域の大型植食性カイアシ類のわずか1-2%程度であった。代謝活性について、これら貝虫類、ポエキロストマトイダ・カイアシ類を始め、多数の中・深層性カナノイダ・カイアシ類の酸素消費速度は表層性カイアシ類のそれに比べて約1/2程度と低いことが明らかになった。同様の結果はETS活性でも得られた(何れの比較においても水温や体サイズの影響は除去済み)。成長ポテンシャルの指標となる核酸比(RNA/DNA)も表層性種に比べて中・深層カイアシ類で低かった。これらの結果を総合すると、餌資源の少ない深海環境ではそこに生息している動物プランクトンはゆっくりと遊泳し、成長速度も低く、そのため寿命である可能性が示唆された。
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