研究概要 |
厚岸湖へ流入する大別川水系、別寒辺牛川水系、オッポロ川水系全流域の76地点において5月に河川水のサンプリングを行ない(TN, TP, NO_3^<yntury>N, Si)を分析するとともに、各流域の土地利用(畑地(草地)、林地、市街地)を1/25000地形図から読みとった。TN, TP, NO_3^<yntury>Nの平均濃度は、0.2,0.91,0.06mg/Lであったが、大別川上流域の大規模牧場支流では、それぞれ8.23,2.48,0.62mg/Lの最大値を示したオッポロ川、別寒辺牛川、最上流森林域では、それぞれ0.00,0.27,0.01mg/Lの最低値を示し、北海道の森林渓流水濃度と同程度であった。なお、Si濃度は9〜22mg/Lであり,大別川でやや低く,そのSi/TN、Si/TPモル比は2.7、64.3以下に低下し、富栄養化の傾向にあった。 大雨時の流入物質の厚岸湖における分布と変動を明らかにするために、河川1カ所、厚岸湖5カ所、厚岸湾1カ所の合計7カ所において、降雨開始から72時間の連続採水および流速測定を行った。そめ結果から得られたパラメーターを用いて、大雨時の厚岸湖における植物プランクトン生産の応答を計算した。その結果、雨量が30mmと少なかったので、観測結果ではわれわれの仮説(定常時の陸域からの流入によって厚岸湖の生物生産が支えられており、非定常時に流入する窒素は沿岸生態系にほとんど利用されていない)を十分に説明することはできなかったが、数値モデルによるシミュレーションでは、河川からの流入量が2倍になると仮定して、河川濃率を2倍にした場合は明らかに植物プランクトンが増加するが、流量を2倍にした場合は植物プランクトンはむしろ減少することが示唆され、仮説の正当性が裏付けられた。今後は、もっと豪雨時の観測が必要である。
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