研究課題
基盤研究(A)
本研究では成体で発病する疾患モデルをスクリーニングすることを目的として、透明メダカを用いてエチルニトロソウレア(ENU)ゲノムワイド変異体スクリーニングを行った。本年度は優性および劣性変異体についてスクリーニングを行った。優性変異体:F1世代で、合計25の優性変異体候補を見いだした。心臓に肥大または異常が見られるもの9、腎臓が肥大しているもの9、肝臓の色が白色を呈するもの6、眼球が突出しているもの1、であった。これらの変異体を透明メダカ(ST11 13b/b)と交配したF2世代では、8変異体で不妊であった。他の17変異体から得られたF2について組織学的検索を行った。腎臓が肥大しているもの1、心臓が肥大し、腎臓および肝臓にはリンパ球や腫瘍状組織が見られるもの2、心臓肥大症が見られるもの1、心臓が肥大し、心房と心室が逆転しているもの1、の5系統が得られた。F2世代の他の家系についての解析はこれからである。劣性変異体:腎臓が肥大しているもの3、眼胞の片側をランダムに欠失しているもの1、初期胚の左右軸形成に異常を示すもの2、の6系統が得られた。左右軸形成異常変異体では心臓のルーピングと胆嚢および脾臓の位置が野生型に対してミラーイメージになっていた。southpawやlefty遺伝子の発現を調べている。これらの結果から、透明メダカは成体で異常を示す疾患モデルを長期観察(通常6ヶ月以上の観察を行っている)によってスクリーニングする方法として有効であることが明らかになった。特に腎臓は外部からの観察が他の臓器に比べ容易であること、腎臓に疾患があっても長期に生存することなどから、腎臓の疾患変異体のスクリーニングには優れたモデルになると考えられる。また、これらの腎臓変異体と比較するために、嚢胞腎を発症する自然突然変異体について記載と遺伝子解析を行った。
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