研究概要 |
本年度は、中国砂漠域に分布する塩湖を対象にして、堆積物試料について長鎖アルケノン組成変動から水温、塩分変動、花粉組成から植生変動、炭素酸素安定同位体比の変動から植生・水温変動を見積もることを目的としている。 本年度は、タクラマカン砂漠のタリム盆地域に分布する塩湖群の一つである塩湖の中国西部タクラマカン砂漠域のタリム盆地に存在する塩湖、ボステン湖(41o55.091'N,86o44.962'E)試料およびジュンアガル盆地のアイビー湖(44o34'-45o08'N,82o36'-83o167E)を対象にして長鎖アルケノンによるUk'37,炭素窒素安定同位体比、14C年代などのデータを取得し、古環境解析を行い、以下の件を得た。 1)ボステン湖:本湖堆積物の全長87cmの柱状試料を対象にして上記の分析を行った。本試料の14C年令は67-69cm深において4,040年BPと見積もられている。有機炭素含量、delta13Cは,ともに20-22cm深(1,400年BP)で大きく変化し、環境変化の存在を示唆した。これに加えてアルケノン水温の20-22cm深を境に上層の18-20oCから下層の20-24oCへと上昇したことを認めた。この結果から、現在のところこの地域が湿潤温暖気候から寒冷乾燥気候に変化したと判断している。興味あることは、急激な気候変化に関する今回の結果は、前漢時代から栄えたコンチェダリア河畔オアシスの楼欄が滅亡した時期(4世紀)とほぼ一致している点である。 2)アイビー湖:本湖堆積物の全長180cmの柱状試料を対象にして上記の分析を行った。本試料の14C年令は、135cm深で1,910年BPと算定された。Delta13Cは、全層にわたり大きな変化なくで-20〜-24o/ooを示し、アルケノン水温は5oC前後あった。この結果は、この湖を取り巻く環境は低温で、湖底堆積物有機炭素はC4植物(草本植物)の影響を大きく受けているものと判断される。しかし、この柱状試料に関しては、さらに詳細な化学分析を実施中である。
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