原子分子間結合の分解によって起こる体積膨張を拘束することにより超高圧を発生する方法と装置が開発された。サファイアアンビルセルで拘束したグラッシーカーボンにパルスYAGレーザーを照射して分解する方法が提示された。サファイアアンビルを通してルビー蛍光が観察された。さらに、ダイヤモンドとサファイアアンビルを拘束に用いてダイヤモンド単結晶の反射率測定が行われた。テラパスカルの圧力発生装置之開発にはX線回析を用いる圧力測定が不可欠となる。そこで、動的圧力測定のためにパルスX線回析装置の開発が進められ、本装置に組み込まれた。それらの結果は次の通りである。1.サファイアセルにおいて300GPaを超える超高圧が1msの間達成された。2.ダイヤモンドセル実験において観察される幅広い蛍光バンドはこれまで考えられてきたようにダイヤモンドからのものでなく、高圧誘起のルビーの4^T_2→4^A_2遷移によるものである。3.ダイヤモンド単結晶から金属化を示唆する高い反射率が観察された。4.加圧したダイヤモンド粒子には大きく塑性変形した金属に匹敵する転移密度が観察された。5.Nielsenによって理論的に予測されたダイヤモンド金属化条件から400GPaを超える単一軸応力の発生が推測された。6.本方法はパルスレーザー誘発による従来の高圧発生実験の場合と較べて6桁小さい強度のレーザー照射によってテラパスカルの圧力を発生させる高い圧力効率を持つ。7.パルスX線回析装置により微量の金属粉末から単位セルの体積収縮を決定できる回折データが得られた。テラパスカルを可能にする両方のアンビルを通してパルスレーザーを照射する構成では、試料室側面からX線を観察する必要があり、まだ検討すべき技術的課題が残っているが、本装置を用いて近い将来テラパスカル域における物質の高圧相あるいは合成の研究が始まるであろう。
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