研究課題
古鏡は、弥生時代から古墳時代にかけて、墳墓の最も重要な副葬品の一つである。なかでも、三角縁神獣鏡は、"卑弥呼の鏡"という説もあり、邪馬台国論争や大和政権による国家統一事業と結びついて、重要な歴史的意義を持つと考えられてきた。ところが、古鏡は全国に分散して保管されているために、研究者の多くは実物を比較しながら詳細に検討する機会に恵まれなかった。そのために、古鏡の研究方法は、限られた研究者による実物観察か、写真による平面的な図像比較に限られてきた。本研究では鏡のレーザー三次元形状計測、デジタルマイクロスコープによる表面加工痕跡の立体的な記録、高精度透過X線像による内部解析などのデジタル技術を駆使することで、古鏡を立体的・構造的・製作技術的に研究するための三次元デジタル・アーカイブを構築している。本年度は、前年度に引き続き、東京国立博物館、宮内庁書陵部所蔵の三角縁神獣鏡を含む古墳出土鏡群について、鏡表面のレーザー三次元形状計測、デジタルマイクロスコープによる表面加工痕跡の観察などを行った。また、可搬性の三次元測定機(ATOS II)を使って、神戸市教育委員会、高槻市教育委員会所蔵鏡を調査した。その結果、これまでに約500面(約200面の三角縁神獣鏡を含む)の三次元計測と実物の熟覧観察を終了した。また、同文様鏡(同笵・同型鏡)の重ね合わせによる詳細な差異の比較を目的にソフトウェア(TDC 東大生産研究所 池内・増田)を開発した。
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