中国江南沿海村落の民俗誌的研究

2005 年度 研究成果報告書概要

• 研究課題/領域番号: 14251010
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 海外学術
• 研究分野: 文化人類学(含民族学・民俗学)
• 研究機関: 神奈川大学
• 研究代表者: 福田 アジオ 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (60120862)
• 研究分担者: 田島 佳也 神奈川大学, 経済学部, 教授 (40201610) ; 橘川 俊忠 神奈川大学, 法学部, 教授 (80343630) ; 津田 良樹 神奈川大学, 工学部, 助手 (00112996) ; 常光 徹 国立歴史民俗博物館, 研究部, 助教授 (40321541) ; 菅 豊 東京大学, 東洋文化研究所, 助教授 (90235846)
• 研究期間 (年度): 2002 – 2005
• キーワード: 民俗誌 / 江南地方 / 漁村 / 廟 / 族譜 / 民家 / 国際研究者交流 / 中国

研究概要

本研究は、従来ほとんど取り上げられることがなかった中国江南地方の沿海部漁業村落において詳細な民俗調査を実施し、民俗誌を作成することで、今後の中国の民俗文化研究に貢献することを意図したものである。浙江省の2村落を調査対象とし、4年間の科学研究費補助金の交付期間において継続反復調査をおこなってきた。その結果、ほぼ以下のことが明らかになった。
研究対象とした2村落は、浙江省象山県石浦鎮の東門島と温嶺市石塘鎮〓山であるが、それぞれにおける成果はほぼ以下の通りである。東門島においては、多くの廟があり、それを拠点とする活動が活発で、人々の娯楽に大きな役割を果たしているが、その活動に仏教の僧侶が関与していること、その活動の経済的基盤は漁業・漁船にあることを明らかにした。そして、近年の生活環境の大きな変化のなかで、信仰や儀礼・行事にも新たな動向が見られることも明確にした。宗族その他の父系親族組織は顕著ではなく、母方・妻方親族及び近隣関係が重要な社会関係であることも明らかになった。他方、〓山については、住民の多数を占める陳姓が福建省からの移住を伝え、現に福建語を用い、また福建と共通する民俗が少なからず伝承されていることを具体的に把握することができた。さらに、陳氏の族譜を正続全册の写真撮影を行い、その内容分析から、この地方の宗族の組織化の過程を明確にすることができた。他方、〓山ではキリスト教が盛んになってきており、それに伴う変化の様相も把握できた。
改革開放下の沿海漁業村落が、その歴史的特徴を維持しつつ、大きく変化してきていることを、民俗誌として記述することができた。これは先行研究の乏しい地域の民俗誌として貴重な成果である。