研究課題
本年度は、予防外交の可能性を世界の各地域において検証するために、国内の地域研究者を招いて研究会を実施した。アフリカ、旧ソ連、スリランカの専門家に予防外交の観点から報告をしてもらうとともに、国際政治理論家から予防外交全般についての一つの理論的視点を提供していただいた。同時に本科研メンバーによる研究の進行状況についての報告を行い、相互批評を行った。各研究により得られた知見を要約するのは困難であるが、研究会を通じて明らかになった点としては以下がある。第一に、予防外交の態様・可能性は、いうまでもないことであるが、展開される地域の情勢によって大きく異なるのであり、今回の研究会における地域研究者から与えられた示唆は大きいものがあうた。予防外交が成果をあげているかどうかの評価は、当該地域から具体的に問われなければならないことを再認識することができた。今後も予防外交の概念、先進諸国・国際機関などによる予防外交への取り組みに関する研究を進める際に、具体的な地域の状況をふまえる必要がある。第に、予防外交は、伝統的には、狭い意味での紛争の予防をめざした一連の活動(状況監視、調停など)をさすが、今日における予防外交の意義を考えるためには、このような分析枠組みでは不十分であることがますます明らかになってきている。特に紛争が一部の国で繰り返し再発する傾向がみられることを考慮すると、紛争後社会において紛争の後遺症を癒し、復興をめざす平和構築との関連が重視される必要があろう。予防外交と平和構築の間の概念的な関係などさらに検討を要する課題を認識することができた。(了)
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