研究概要 |
インカ帝国の空中都市遺跡として知られるペルー国のチュピチュ世界遺産を主な試験地として,斜面変動計測と土質強度試験の結果を総合した計測数値に基づいた説得力ある地すべり危険度評価を実施し,大規模岩盤地すべりの危険度予測の一例を先進的に進めることが本研究の目的である。 本課題を国際共同研究として推進するため、研究協力者であるペルー,イタリア,チェコ,スロバキアの研究者らとともに国際斜面災害研究機構(ICL)の第1回代表者会議(平成14年11月、ユネスコ本部)において提案し、国際斜面災害研究計画(IPL)のCoordinating Project「C101-1:マチュピチュ遺跡における地すべりの調査」として採択された. 本課題では毎年国際調査団を組織し、ペルーの文化庁,自然資源庁,外務省,地質鉱物金属研究所、地球物理学研究所,クスコ大学の協力を得て調査を行い、地すべり変状調査及び電子雨量計,長スパン伸縮計、トータルステーション(光波測距儀)、GPSの設置、観測を実施した.これらの実績の上でペルー国政府は上記C101-1のグループを公式な同遺跡の地すべり調査団として認定した。年度毎に提供している研究成果は政策に反映されている。 伸縮計観測の結果では雨期には地すべり移動が観測され、乾期には停止することが見いだされた。同遺跡が山稜に建設された理由は、この場所が過去の地すべりによって山稜が削られ、居住可能な平坦地形が形成されたこと、および地すべりによって岩が破砕され山稜周辺に農耕が可能な土壌が形成されたためであると推定した。 平成17年10月に米国科学アカデミー本部で開催したICL総会で本課題の成果を報告した。同時に佐々らが編集し、独・Sringer社から発行した書籍の巻頭に成果を掲載した.平成18年1月に国際斜面災害研究機構、京都大学、ユネスコを含む国連6機関が東京・国連大学で共催した円卓会議において本研究成果はIPLの核となるプロジェクトであるとして高く評価された.
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