1.エルニーニョ現象の影響下にある太平洋の西部域と東部域で水産活動の基盤を成す沿岸生態系に関するデータを集めた。また、群集構造や種間関係に関して熱帯域との比較のために、亜熱帯的な生態系を成す九州西岸天草海域での調査を同時におこなった。西部太平洋熱帯沿岸域では特にサンゴ礁生態系の構造に関する基本データを得るために、インドネシア東部の沿岸生態系調査を行い、東部太平洋熱帯亜熱帯域では過去に強いエルニーニョの影響を受けたペルー中部域の沿岸帯で生態系調査をおこなった。また、これらの沿岸生態系に関する既存データの収集と整理をおこなった。 2.インドネシア東部のサンゴ礁魚類群集の調査から、400種以上が記録され、空間的な群集の変異に関する情報を得た。このデータに伴い、種類数の多い群集における種数推定法の検討を行い、新たな方法を開発した。また、魚市場調査により沿岸零細漁業に関するデータを得た。 3.太平洋東岸熱帯域の沿岸調査として、ペルー中部において沿岸生物群集、特に岩礁性ベントスの空間スケール分布動態と高次捕食者としてのヒトデ類の個体群生態・食性パターンに関するデータを得た。高次捕食者」個体群の変動データにつき時系列解析をおこない、エルニーニョとの関連を検討した。また、潮間帯および潮下帯の数箇所にデータロガーを設置し、長期的なデータを得る予備調査をした。マイクロハビタット間の温度パターンの違いについて有意義な結果を得た。また、沿岸零細漁業に関するデータの収集整理をおこなった 4.亜熱帯沿岸海洋生物の種間関係の例として、固着性ベントスであるCapitulumとSeptiferの共存関係を調べたほか、移動性ベントスである潮間帯性魚類における種間関係を実験的に明らかにした。
|