新旧両大陸のリーシュマニア症とその病態生理および伝播に関する比較研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14256002
• 研究機関: 高知大学(医学部)
• 研究代表者: 橋口 義久 高知大学, 医学部, 教授 (10037385)
• 研究分担者: 加藤 大智 山口大学, 農学部, 助教授 (00346579) ; 上里 博 琉球大学, 医学部, 助教授 (60160157) ; 野中 薫雄 琉球大学, 医学部, 教授 (10039571) ; 片倉 賢 群馬大学, 医学部, 助教授 (10130155) ; CALVOPINA Manuel 高知大学, 医学部, 助手 (20346711)
• キーワード: リーシュマニア症 / サシチョウバエ / 保虫動物 / エクアドル / パキスタン / 治療薬 / PCR

研究概要

本年度は研究計画に基づき、新大陸のエクアドル国と旧大陸のパキスタン国において、リーシュマニア症の伝播・病態生理に関する調査・研究を実施した。エクアドルではアマゾン流域に多い難治性の粘膜皮膚リーシュマニア症の患者を治療する目的で、Itraconazoleの薬効を検討したところ、一定の効果が得られ、その結果は国際誌に印刷中である。また、同国でのleishmaniasis recidivansについての情報を得るため、いくつかの流行地で患者の選定を行い、病巣部から電顕病理用の生検材料ならびにPCR用の資料を採取した。得られた結果は、エクアドルでははじめての知見であり論文としてまとめ投稿中である。一方、媒介者のサシチョウバエについては、アンデスおよび太平洋岸の流行地で調査を行なった。採取した個体から、原虫感染個体を検出るための方法としてPCRを確立した。この方法は、解剖結果ともよく一致して高い検出率を示したので、米国熱帯医学雑誌に投稿準備中である。パキスタン国ではアフガニスタンからの難民の流入や大規模な季節労働者の移動により、従来の流行地と異なる地域で皮膚リーシュマニア症が流行し問題になっている。そこで、Larkana県とBalochistan県の各地で疫学調査を実施し、患者の鑑別診断や媒介サシチョウバエの調査を行なった。その結果、各流行地における患者の原虫保有率はかなり高率であることが判明した。一方、サシチョウバエに関してはPCRによる検出を試みているが、活動時期との関係で今のところ感染個体を見出すには至っていない。目下、現地の共同研究者がサシチョウバエの採集を継続実施中であり、さらに検討する予定である。また、流行地における保虫宿主を決定するため、ネズミ類や犬その他の動物から採材し、PCRその他の方法で陽性個体を検索中である。これらの情報はいずれも将来の本症対策上重要である。

研究成果

• [文献書誌] Ken Katakura: "Identification of Endotrypanum species from a sloth, a squirrel Lutzomyia sandflies in Ecuador by PCR amplification and sequencing of the mini-exon gene."The Journal of Veterinary Medical Science.. 65・5. 649-653 (2003)
• [文献書誌] Abdul Bhutto: "Detection of new edemic areas of cutaneous leishmnaiasis in Pakistan : a 6-year study."International Journal of Dermatology.. 42・7. 543-548 (2003)
• [文献書誌] Yoshihisa Hashiguchi: "Leishmaniasis"Progress of Medical Parasitology in Japan.. 7. 537-553 (2003)
• [文献書誌] M.O.Sato: "Evaluation of tongue inspection and serology for diagnosis of Taenia solium cysticercosis in swine : usefulness of ELISA using purified glycoproteins and recombinant antigen."Veterinary Parasitology. 111. 309-322 (2003)
• [文献書誌] Mahammad Zahidul Islam: "Direct agglutination test with urine samples for the diagnosis of visceral leishmaniasis."American Journal of Tropical and Hygine.. 701. 78-82 (2003)
• [文献書誌] Katakura Ken: "Overexpression of LaMDR2, a novel multidrug resistance ATP-binding cassette transporter, causes 5-fluorouracil resistance in Leishmania amazonensis."FEBS Letters. 28130. 1-6 (2003)
• [文献書誌] Manuel Calvopina: "Itraconazole in the treatment of New World mucocutaneous leishmaniasis"International Journal of Dermatology. (in press). (2004)
• [文献書誌] Gloria Luyo-Acero: "Sequence variation of the Cytochrome of gene of various human pathogenic members of the genus Leishmania : A new approach for their identification"Parasitology. (in press). (2004)
• [文献書誌] 橋口 義久: "医学大辞典(小児リーシュマニア他)"医学書院. 17 (2003)
• [文献書誌] 橋口 義久: "人獣共通血染症(アメリカトリパノソーマ症・シャーガス病)"医歯薬ジャーナル社(印刷中). (2004)