研究課題
本研究は、知識や認識の実践的意義を解明し、その社会的、法的、制度的、倫理的なあり方を明らかにすることを研究目的とするものであり、またこれを通じて「自然と人為」という伝統的対比に関する哲学的再検討を行うことを意図するものであった。最終年度の今年度は、これらの目的を現代の状況と絡めて探究することができた。具体的に以下のような成果をあげることができた。松永澄夫は、事柄の把握や秩序の成立の先に言葉がどのような働きをするのか、明らかにし、かつ、人間が高い認識能力と技術に裏打ちされた技術力を用いていかに環境を変えてきて、現在、そして問題に直面しているかを幅広く検討した。天野正幸は、ギリシャ哲学における「ピュシス」並びに「ノモス」概念をめぐる研究を行い、併せてその現代的意義を考察した。高山守は、ドイツ近世哲学における「行為」並びに「規範」の概念を、因果関係の考察を通し、「自然」および「生命」の概念と関連づけ、検討した。一ノ瀬正樹は、歴史認識、曖昧性、ベイズ的認識論、意思決定理論といったトピックに即して、因果性と確率の相関について多面的な考察を行うことができた。これらを一書にまとめ、来年度早々に勁草書房から公刊する予定である。榊原哲也は、「自然と人為」の問題に対して、フッサール現象学の「自然と精神」をめぐる問題群からアプローチを行い、フッサールにおいてはこの問題群が、ディルタイ、ヴィンデルバント、リッカートといった同時代の哲学者たちとの思想的対決の中で形成されてきたことを明らかにした。また、「人為」としての哲学の営みの倫理性をフッサールに即して明らかにした。伊藤美惠子は、カント理論哲学における「自然」と「行為」概念を取り上げ、両概念の関連と理論的基礎について考察した。中真生は、フランス倫理学、特にレヴィナスとナベールの思想研究を通じて、「苦しみ」と「悪」の関係を明らかにすることができた。
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (10件) 図書 (5件)
論集(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部哲学研究室) 24号
ページ: 1-19
死生学研究(東京大学大学院人文科学研究科21世紀COEプログラム「生命の文化・価値をめぐる<死生学>の構築」) 2006年春
ページ: 37-52
Philosophy of Uncertainty and Medical Decisions, Bulletin of Death and Life Studies, 21st Century COE Program DALS, Graduate School of Humanities and Sociology, The University of Tokyo vol.2
ページ: 15-42
論集(東京大学大学院人文社会系研究科・文学部哲学研究室) 第24号
ページ: 20-39
ページ: 40-50
ページ: 51-67
Das Geheimnis des Anfang (Peter Lang, Frankfurt a.M.)
ページ: 205-227
哲学 No.56
ページ: 42-62
思想 第976号
ページ: 106-124
哲学雑誌『自然主義と反自然主義』 第120巻792号
ページ: 1-28