1.グローバル化と宗教に関する諸文献を収集し検討した結果、ウォーラーステインの世界システム論、ギデンズの再帰的近代化論、そしてロバートソンのグローバル化論と大別でき、なかでもロバートソンのグローバル化に伴ってローカル化が進展し、新たなナショナル・アイデンティティーの追求から原理主義的傾向が強まるという主張に注目。現象としても、反カルト運動のナショナリズム性やアメリカにおけるキリスト教原理主義の台頭など、原理主義的主張がイスラム世界のみならず世界の主要国での傾向であることが明らかとなり、ロバートソンの理論の有効性が把握できた。 2.予備的な実地調査として、今年度は、日本の新宗教運動のうち欧米で「カルト」「セクト」と名指しされたオウム真理教、崇教真光および真光文明教団を文献的に検討し、また後二者には訪問調査をした。なかでも崇教真光はフランスで日本中心主義の教義を理由に有害「セクト」扱いされたことに困惑し、対策を検討し始めていた。 3.海外調査は韓国のみ行い、文化観光部の宗務室を訪問して韓国政府としての政策を聞くことができた。特別に「カルト対策」をとってはいないが、「外来宗教」の戦闘性に注視して、情報を収集していた。教団としては「エホバの証人」「韓国SGI」を訪問調査したが、エホバは会員数が8万人を越え、徴兵拒否問題が憲法問題として裁判で争われていた。SGIは会員数が100万人を越えて増加していた。ただ「カルト」として批判されることはないとのことであった。また中国の「邪教」対策、ロシアの動向も学内同僚の浜・宮川の協力を得て資料入手・検討した。
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