独仏を中心としたヨーロッパ生命倫理の全体像の解明とその批判的考察

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14310016
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 飯田 亘之 千葉大学, 文学部, 教授 (90009663)
• 研究分担者: 忽那 敬三 千葉大学, 文学部, 助教授 (70192028) ; 松田 純 静岡大学, 人文学部, 教授 (30125679) ; 加藤 尚武 鳥取環境大学, 環境情報学部, 教授 (10011305) ; 盛永 審一郎 富山医科薬科大学, 薬学部, 教授 (30099767) ; 菊地 惠善 九州大学, 大学院・人文科学研究院, 教授 (30186192)
• キーワード: 生命倫理 / ドイツ / フランス / 胚研究 / 人間の尊厳

研究概要

独仏を中心にヨーロッパ生命倫理思想の動向とその根底にある思想を捉え、米国を中心とした英語圏および日本の考え方等と比較検討し、世界的な視野に立って、生命に関する将来像を議論するための基礎的体系的研究を行うことを目的に、本年度は、フランスに関しては、1994年の生命倫理法とそのベースとなった報告書および国家倫理諮問委員会の見解、ドイツに関しては、「胚保護法」、及び各種委員会報告書等を中心的な資料として、研究を行うこととした。
そのため全体研究会ではテーマを両国の胚研究問題にしぼり、胚研究をめぐる法規制の根拠のひとつとされる人間の尊厳概念を検討し、その概念の役割を明らかにすることを試みた。平行してドイツ連邦議会「現代医療の法と倫理」審議会最終報告書の一部翻訳、フランス参事院ブレバン報告書の翻訳、フランス諮問委員会報告書73巻の一部翻訳と要約(翻訳NO.62、要約NO.61.64他)を行った。
また、研究会の成果および各人の個別研究成果の一部、ドイツの連邦議会審議会最終報告書の翻訳、ブレバン報告書の翻訳、フランス諮問委員会の報告書の翻訳と要約、また独仏生命倫理研究のための基礎的文献の要約紹介等は「独仏生命倫理研究資料集」(2003年2月刊、500頁)として印刷し、この分野の速やかな学問研究向上のための資料として研究関係者に配布することとした。
分担者盛永審一郎教授はドイツ、J.ライター教授を訪ね、上記審議会『現代医療の法と倫理』の内容についての意見交換を行ない、さらにドイツの、ヒト胚および安楽死関連の資料収集をおこなった。研究代表飯田はフランスに国家倫理諮問委員会委員を訪ね次年度招聘打ち合わせとブレバン報告書翻訳に関する話し合いを行った。

研究成果

• [文献書誌] 飯田 亘之: "脳死とイデオロギー"哲学雑誌. No.789. 122-138 (2002)
• [文献書誌] 加藤 尚武: "スイス憲法の生命倫理条項"独仏生命倫理研究資料集. 上巻. 47-52 (2003)
• [文献書誌] 加藤 尚武: "景観保護の法律問題"生命・環境・科学技術倫理研究. VIII. 140-145 (2003)
• [文献書誌] 片桐茂博, 原一樹: "フランス国家倫理諮問委員会「生の終焉・生の停止・安楽死に関する答申」(要約)"独仏生命倫理研究資料集. 上巻. 234-245 (2003)
• [文献書誌] 松田純: "人聞の尊厳はいかなる意味で生命倫理学め基礎となりうるか-ドイツ連邦議会『現代医療の法と倫理』審議会最終報告書の特徴"独仏生命倫理研究資料集. 下巻. 370-379 (2003)
• [文献書誌] 松田純, 小椋宗一郎訳: "ドイツ連邦議会『現代医療の法と倫理』審議会 最終報告書 詳細目次"独仏生命倫理研究資料集. 下巻. 380-390 (2003)
• [文献書誌] 松田純, 小椋宗一郎訳: "ドイツ連邦議会『現代医療の法と倫理』審議会 最終報告書 B章 倫理的・法的な方向付けに関するいくつかの要点"独仏生命倫理研究資料集. 下巻. 391-427 (2003)
• [文献書誌] 松田純: "遺伝データの取り扱いについて-ドイツ連邦議会『現代医療の法と倫理』審議会最終報告書における評価と提言-"独仏生命倫理研究資料集. 下巻. 428-433 (2003)
• [文献書誌] 松田純, 中野真紀訳: "ドイツ連邦議会『現代医療の法と倫理』審議会最終報告書 C章 2.2.2.1 遺伝子診断と職場医療"独仏生命倫理研究資料集. 下巻. 434-443 (2003)
• [文献書誌] 松田純, 中野真紀訳: "ドイツ連邦議会『現代医療の法と倫理』審議会最終報告書 C章 2.2.2.2 遺伝子検査と保険制度"独仏生命倫理研究資料集. 下巻. 444-458 (2003)
• [文献書誌] 松田純: "ドイツ連邦議会『現代医療の法と倫理』審議会最終報告書 C章 包括的な遺伝子診断法制定の提言"独仏生命倫理研究資料集. 下巻. 459-468 (2003)
• [文献書誌] 忽那敬三, 木村博訳: "L.ジープ「自己実現、承認、政治的現存-ヘーゲル政治哲学のアクチュアリティ」"ヘーゲル哲学研究. 8. 2-14 (2002)
• [文献書誌] 菊池恵善: "倫理と実践を架橋する人間学の課題と現状-ガダマーの論文「理論、技術、実践」の批判的評価"生命・環境・科学技術倫理研究. VIII. 1-8 (2003)
• [文献書誌] 菊池恵善: "M.H.ヴェルナー「人間の尊厳をめぐる論争-倫理的中心概念の意義と問題-(要約)」"独仏生命倫理研究資料集. 上巻. 24-31 (2003)
• [文献書誌] 菊池恵善: "P.リクール「医学的判断の三つの水準」(要約)"独仏生命倫理研究資料集. 上巻. 32-39 (2003)
• [文献書誌] 檜垣 立哉: "思想としての生命論"『哲学』日本哲学会. 53号. 33-46 (2002)
• [文献書誌] 檜垣 立哉: "「差異」の差異 デリダとドゥルーズ"現象学年報. 18. 73-86 (2002)
• [文献書誌] 盛永 審一郎: "リプロダクティブ・ライツと胚の尊厳"富山医科薬科大学看護学会誌. 5巻1号. 19-28 (2003)
• [文献書誌] 蔵田伸雄: "ヒトクローンの生命倫理"月刊新医療. No.329. 92-94 (2002)
• [文献書誌] 蔵田伸雄: "生命倫理と宗教-「バイオエシックス」の限界-"佛教大学総合研究所紀要別冊『現代医療の諸問題--仏教ヘルスケアの視点から』. (印刷中).
• [文献書誌] 久保田 顕二: "環境倫理学と非人間中心主義"生命・環境・科学技術倫理研究. VIII. 122-139 (2003)
• [文献書誌] 今井 道夫: "医学部における生命倫理教育"教育と医学. 50巻11号(通巻593号). 27-34 (2002)
• [文献書誌] 今井 道夫: "ターミナルケアと死後の生"札幌医科大学医学部人文自然科学紀要. 43巻. 13-18 (2002)
• [文献書誌] 久保陽一, 河谷淳, 飯田亘之他: "原典による哲学の歴史"公論社. 387 (2002)
• [文献書誌] 飯田亘之他編: "生命・環境・科学技術倫理研究VIII"千葉大学. 266 (2003)
• [文献書誌] 飯田亘之編: "独仏生命倫理研究資料集上巻"千葉大学文学部哲学講座飯田研究室. 259 (2003)
• [文献書誌] 飯田亘之編: "独仏生命倫理研究資料集下巻"千葉大学文学部哲学講座飯田研究室. 233 (2003)
• [文献書誌] 槍垣 立哉: "ドゥルーズ 解けない問いを生きる"NHK出版. 126 (2002)
• [文献書誌] 近藤 均, 盛永審一郎他編: "生命倫理事典"太陽出版. 989 (2002)
• [文献書誌] 内山雄一, 大井賢一, 長島隆他編: "資料集 生命倫理と法"太陽出版. 413 (2003)