研究課題/領域番号 |
14310020
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
丸谷 晃一 中部大学, 人文学部, 教授 (50279999)
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研究分担者 |
刈部 直 東京大学, 大学院・政治学研究科・法学部, 助教授 (00261941)
鷲見 幸美 中部大学, 人文学部, 助教授 (50340211)
安達 隆一 中部大学, 人文学部, 教授 (80023985)
相原 耕作 東京都立大学, 法学部, 助手 (80336528)
遠山 敦 三重大学, 人文学部, 助教授 (70212066)
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キーワード | 伊藤仁斎 / 伊藤東涯 / 朱子学 / 論語古義 / 仁斎日記 / 古義堂文庫 / 林本 / 日本思想史 |
研究概要 |
伊藤仁齋は、荻生狙徠と並んで近世日本を代表する思想家である。仁齋の諸資料は、天理大学付属天理図書館古義堂文庫に稿本を含めてほぼ完全な形で所蔵されている。こうした好条件に恵まれているにもかかわらず、伊藤仁齋の全集は、現在に至るまで刊行されてはいない。その全集未刊の最大の理由は、底本の確定の困難さにある。そこで本研究では、仁齋と東涯との諸資料を全面的に検討した結果、仁齋生前最後の稿本である林景范の筆写本(「林本』)が底本として最も適切であると判断した。そして、その刊行のための準備作業として仁齋の主要著作の「林本」を活字化する作業をほぼ完成させ、また仁齋の著作の訳注稿の一部を発表した。こうした作業を踏まえて仁齋の全集の構成も次のように決定した。 第1巻『論語古義』、第2巻『孟子古義』、第3巻『中庸発揮』『大学定本』、第4巻『易経古義』『春秋経通伝通解』、第5巻『童子問』、第6巻『語孟字義』、第7巻『古学先生文集・詩集』、第8巻『仁斎日記』『古学先生和歌集』『仁斎日札』、別巻『東涯日記』『東所日記』。 この全集を完成させるために本年度行った作業は、次の二つである。「最上至極宇宙第一の書」と最大限の評価を仁齋が与える『論語』の注釈書である『論語古義』の書き下し文を、『論語古義』「林本」、同「定本」を参照しつつ作成した。この作業によって仁齋の訓読を可能な限り復元させるという目的は、ほぼ達成されたと言えよう。 次いで『論語古義』の注釈・校訂を行った。『論語古義』の出典調査によって次の点が明らかにされた。仁齋の注釈は、孔安国・何晏などの古注ともに、『論語集註』『論語集註大全』の新注が少なからず採用されている。つまり仁齋は、批判の対象とする朱子学の注釈を採用しているのである。この点から仁齋学における朱子学の意味について再考する必要があると考えられる。
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