研究概要 |
母親を介して胎生期に受けたストレスが仔ラット脳の細胞新生にいかなる影響をもたらすかについて検索した。 実験動物にはSD系ラットを用いた。ストレスには、300Wの照明下でのボールマンケージによる拘束を用いた。ストレスは、1日45分×3回(午前10時,午後1時および午後4時)を5日間(妊娠13,14,15,16,17日目)にわたって与えた。また、13,15,17日目の3回目の拘束終了後に新生細胞のマーカーであるBrdU (50mg/kg/回×3回)を母親ラットの腹腔内に投与した。仔ラット脳は生後7日目と10日目に取り出し、BrdUを発現した細胞数を免疫組織化学法を用いて調べた。検索対象脳部位は海馬歯状回と側坐核とした。その結果、拘束ストレスに長期間曝露された母親から生まれた仔ラット(ストレス群)の海馬歯状回と側坐核では、7日後と10日後のいずれにおいても、ストレスに曝されなかった母親から生まれた仔ラット脳(非ストレス群)に比べて、BrdU陽性細胞の発現数が約2/5(海馬歯状回)から1/5(側坐核)にまで減少していた。加えて、ストレス群の仔ラットの副腎重量は非ストレス群に比べてやや重く(約1.11倍)、いっぽう脾臓重量はやや軽い(約0.92倍)ことが明らかになった。 今回の研究から、妊娠母親ラットに対する1日45分×3回×5日間(+300Wの照明)の長期にわたる拘束ストレスは仔の海馬と側坐核の細胞新生を著しく抑制することが示唆された。
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