老化に伴う認知機能低下を、サルを対象として明らかにすることを目的としている。これまでの研究で前頭葉機能が加齢とともに低下することが示唆されている。これまでの研究では記憶や行動抑制などが調べられてきたが、前頭葉機能として重要な「行動計画(planning)」に関するデータはほとんどない。そこで本研究では、サルが計画的に行動しなければ効率良く解決できない「Food retrieval task」を用い、その成績を弱齢群と老齢群で比較した。また、老齢群に見られる行動、弱齢群との差を検討した。その結果、課題解決までに用した試行数は老齢群で有意に多く、老齢群の成績低下が示された。両群に見られる行動を分析してみると、弱齢群は個体ごとにある規則をつくり、それに従って行動する傾向が強かった。また老齢群内では規則をつくる傾向にバラつきがあり、その傾向が強い個体ほど成績が良いという相関が認められた。この結果は、老化に伴い、行動の計画性が低下し、それが一因となり認知課題の成績が低下することを示唆する。
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