研究課題
ワーキングメモリは、課題遂行に必要な情報を一時的に活性化状態で保持することに加え、並行して処理をおこなう機能を持つと考えられる。そのなかでも、Baddeley(1986)のモデルによる中央実行系(central executive)は、注意の制御系とも呼ばれるように、課題の遂行を進めるための制御システムであり、サブシステムの調整をおこない、課題遂行に重要な役割を受け持つところである。本研究では、中央実行系の機能、とくに注意の制御機構の神経基盤を探索することを目的とする。そのため、行動指標とともに、脳の局所的な部位の推定に利点をもつfMRI(機能的核磁気共鳴画像)を測定して、中央実行系の制御機構の神経基盤を探索した。本年の研究計画では、ワーキングメモリ容量の個人差に視点を当てた。ワーキングメモリ容量の個人差については、行動指標からのデータから、言語性のワーキングメモリ容量の個人差が、文理解などの言語情報処理に影響をおよぼしていることが指摘されている。そこで、このような個人差を導きだしている神経基盤を探索した。ここでは、ワーキングメモリ容量の個人差を測定するリーディングスパンテストおよびリスニングスパンテスト実施中の脳の活動部位をfMRIにより測定した。ここでは、被験者を行動データのワーキングメモリ容量に基づき2つのグループに分けて比較した。その結果、言語のワーキングメモリシステムにかかわる中央実行系は、前頭葉、特に前頭前野と帯状回を中心に機能していることがわかった。また、ワーキングメモリ容量の個人差も、この2つの領域の活動強度と相互作用が影響している可能性が示された。つまり、この2つの領域が連携して効率的に機能することが、重要であると考えられたのである。
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