研究課題/領域番号 |
14310044
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
辻 敬一郎 中京大学, 心理学部, 教授 (20023591)
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研究分担者 |
鈴木 睦夫 中京大学, 心理学部, 教授 (30108972)
久野 能弘 中京大学, 心理学部, 教授 (40068466)
加川 元通 中京大学, 心理学部, 教授 (10065211)
松尾 貴司 愛知淑徳大学, コミュニケーション学部, 助教授 (30199757)
石井 澄 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (70092989)
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キーワード | 空間性情動 / 高所恐怖・高所不安 / 高所回避傾向尺度 / 感覚性恐怖 / 認知性不安 / 恐怖症 / 心理発生 / 行動適応 |
研究概要 |
本研究は、新奇・暗所・高所・閉所・広場の5種の視空間によって喚起される情動につき、特にそのネガティヴな側面(恐怖・不安)に着目して、その発生および変動について実験的解析を行うとともに心理臨床における精神病理的問題である恐怖心性(phobia)の事例分析を通じて、その特性を明らかにするものである。すなわち、実験的研究と臨床的研究を相互に関連づけ、それら成果を空間性情動の様態と発生を行動生態や行動適応の観点から総合的に考察することを目的としている。本年度の主要な成果は以下の通りである。 1)初年度(平成14年度)、高所視環境によって喚起される情動(いわゆる高所恐怖・高所不安)を取り上げ、先行研究の成果をレヴュウした結果、既存の測定尺度には高所によって一次的に喚起される「感覚性恐怖」と二次的に生じる「認知性不安」という2種の情動の区別が概念的に明確化されていないという問題点が指摘された。それを承けて本年度は、既存の高所恐怖尺度を改善した「高所回避傾向尺度」を作成し、成人(大学生)を対象とする調査によってその特性を明らかにするとともに、高所視環境の回避傾向を特性不安(STAI)との関連を検討した。 2)実験的研究では当初、高所視環境のシミュレーションに仮想現実空間(virtual reality)の導入を計画したが、現在の画像工学技術水準ではヴィデオ映像より優れた刺激を作成することが困難であることが明らかになった。そのため、実環境を映像化した刺激を作成し、それを呈示した場合の心理生理的反応について測定を行い、適切な指標を確定した。 3)高所恐怖心性に関する少数の臨床事例について面接を行い、生活史上の体験を回想法によって高所恐怖・不安の発生に関する知見を得て、それを精神分析的視点と行動療法的視点の双方から検討した。 4)動物行動実験に基づき新奇環境によって喚起される情動反応を分析し、特に視空間知覚に随伴しで喚起されるその特性について新たな所見を得た。 5)生体の知覚・情動・行動を連続過程としてとらえ、適応論の立場から統合的な理論の構築を行った。 以上の所見にもとづき次年度さらに研究を展開し、その成果をまとめる予定である。
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