研究概要 |
本研究課題では、健康生成論の視点から、職業人あるいは企業員の知覚する職務ストレスの様相と、その対処に有効な抗ストレス資源を明らかにした。研究は大きく3つの部分から構成された。まず、初年度と2年度に渡って企業員の「心の健康調査」の実施(720名)と追跡面接(23名)を行った(「企業員のストレスと抗ストレス要因に関する研究I:健康行動とストレス反応,職務意識,出来事変化との関連から」、「企業員における抑うつのリスク要因および緩衝要因に関する研究:怒り持続・喚起傾向を中心に」、「企業人のストレスと抗ストレス要因に関する調査II:抑うつスキーマ、ストレッサーおよび抑うつとの関連」、「職業人のストレスと抗ストレス要因に関する研究III:職業的自己の意味づけを中心に」、「企業員の知覚する職務ストレスと自己指向性との関連に関する研究:面接調査結果のテキスト型データ分析による質的分析」)。次いで2年目では、中小企業経営者の活力をみるために、企業成功感とそれに関連する自己要因との関連を面接調査(40名)と質問紙調査(341名)によって明らかにした(「中小企業経営者の事業成功感獲得に対する心理社会的影響要因:面接調査の質的分析を通して」、「中小企業経営者の自己要因が事業成功感に与える影響」)。最終年度は抗ストレス資源に関与する心理的および個人的要因について2つの基礎実験を行った(「対処的悲観性と不安の統制およびパフォーマンスの関連について」、「復元効果に伴う自律神経系活動の変動の検証:心臓血管系反応からみた感情変化」)。以上の研究結果から、抗ストレス資源として、積極的健康習慣の保持、肯定的自己要因(本来感、希望、肯定的感情他)、積極的ストレス対処が有効な資源であり、同時に不安状況においても有効な認知対処(悲観的対処)を活用することによって、その影響性を緩和する可能性があることが示唆された。
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