研究概要 |
本研究の心理教育的プログラムの特徴は、グループアプローチにあり、とくにサブグループでの協働作業に重点をおいている。3〜4名のサブグループでの協働作業は,問題解決集団としての機能と,ピアサポート・グループの機能を併せ持っている。つまり,この授業での協働体験は、通常教室での授業が展開する現実世界とクライエント個人に焦点化される個人カウンセリングの世界との間に位置している。授業チームは、教師、臨床心理学専攻の大学教授と当該校のスクールカウンセラー,臨床心理学専攻の大学院生の4名で構成されている。たとえば、登校しぶりがあって「カウンセリングルーム」を居場所としていた生徒が,次のステップとしてこの授業に出ることで、教室で級友から受け入れられる体験をし,あるいは「カウンセリングルーム」で個別対応を受けるきっかけにもなることが確認された。 本研究の結果、授業中に心理教育プログラムを実践するうえで、グループ全体への指導とサブグループごとへの指導のバランスを維持することと、そのタイミングの判断が、成否の鍵を握ることが明らかとなった。サブグループ活動が長くなりすぎると、拡散して生徒が何をやっているか分からなくなる。逆にサブグループ活動が短く、グループ全体での活動が長すぎると、生徒が受身的になり、体験的理解が深まらない。特に、課題をサブグループでの活動に分散して、それを全体で共有するための手法を洗練させることが重要である。生徒の意見をいかに効率よく収集していくか、生徒の反応に合わせて臨機応変に対応できるかが、授業者側に問われることになる。 次に,授業,グループ全体,サブグループ活動ともに、目標達成的な活動よりも体験指向的な活動を重視することが重要であることが確認された。授業者は,関与しながら生徒の挑戦を支持し,相互作用的にフィードバックをしながら、生徒自身の内的な総合化の作業を援助することが望まれる。
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