研究課題/領域番号 |
14310088
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
土屋 礼子 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (00275504)
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研究分担者 |
中島 廣子 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 教授 (40047379)
田中 孝信 大阪市立大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (20171770)
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キーワード | 戦争報道 / ナショナリズム / 帝国主義 / 異文化 / 清仏戦争 / ボーア戦争 / 日清戦争 / 日露戦争 |
研究概要 |
最終年度である本年度は、過去二カ年の資料収集と調査を踏まえ、清仏戦争(1884)・日清戦争(1894)・ボーア戦争(1899)の三つの戦争を焦点にし、日露戦争(1904)も視野に含めつつ、日英仏三カ国の大衆紙における戦争報道と異文化紹介、およびそれが世論と情報の民主化と文学芸術に及ぼした影響の比較と分析に取り組んだ。パリ発行の大衆紙としては、『イリュストラシオン(Illustration)』『グローブ(Glaube)』『プチ・ジュルナル(Putit Journal)』『ジャーナル・イラストレ(Journal Illustree)』の四紙を、ロンドン発行の大衆紙としては、『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース(Illustrated London News)』『グラフィック(Graphic)』『スフェア(Sphere)』『ブラック・アンド・ホワイト(Black and White)』の四紙を中心に取り上げ、日本の大衆紙としては、東京発行の『読売新聞』および大阪発行の『大阪朝日新聞』の二紙を中心に取り上げて、比較検討した。 その結果、清仏戦争では、フランスの新聞は英国系新聞の記事転載に甘んじ独自取材が少なく、また日本の新聞でも外電の翻訳が主であり、政治的理念と結びついた読者の階層差と連動した報道内容であったことが判明した。これに対し日清戦争においては、日本の新聞には中国と朝鮮に関する偏見を助長する記述が多く現れ、同時に戦争のルポや臨場感を高める図画、戦争を扱った連載小説や講談などがナショナリズムを高揚させた。一方、ボーア戦争においては、敵対したフランス・イギリス両国の新聞とも、それぞれ国ごとにほぼ同一論調をとり、帝国的資本主義のもとで国民意識や愛国心が、多用されるようになった写真や挿絵・広告などを通じて形成されていった過程が明白となった。戦争報道における愛国主義的傾向は、日英仏ともに日露戦争ではさらに強められたが、同時にそれと異なる言説も現れ、文学を含めた多層のテキストを産出し、情報の民主化が進展したとの知見を得た。
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