研究概要 |
2005年度は、科研調査の最終年度であり、これまでの調査を補充するものとして3回の現地調査を行った。第1回は、8月7日〜28日にダッカの清掃人地区を中心とした調査を、三宅博之が佐野光彦(調査補助員)と行った。第2回目は、9月6日〜17日にチッタゴンの清掃人地区を中心とした調査を、野口道彦が行った。第3回目は、2006年2月13日〜20日にチッタゴンの清掃人地区の調査を、佐藤彰男が坂本真司(調査補助員)と行った。 またチッタゴン大学イフティカル・チョドリー教授を11月19日〜12月3日に日本に招聘し、大阪で研究会を行った。 8月のダッカ調査では、ダッカ市の清掃人組合についての聞き取り調査とともに,ヒンドゥー地区とムスリム地区をかかえるゴノクトリーの巨大な清掃人地区で,ヒンドゥー集団とムスリム集団との権力関係の解明のために2つの住民組織の実態の調査を行った。また近く撤去が予定されているグルシャンの清掃人地区の調査を行った。 9月の野口によるチッタゴン調査では、これまでの調査では明らかにされなかった新事実がいくつか確認された。第1に,チッタゴン市近郊の海岸地域には漁村が点在しているが,その漁民カースト住民の中に,1990年代にはいって市雇用の清掃労働に従事する者が現れはじめたこと、また2003年度の現地調査で予備調査をおこなったMari Paraのヒンズー教徒の住む地区には、請負形式でトイレ清掃に従事する者の存在が認められたが、市雇用の清掃労働者は存在しないことなどが明らかになった。 さらに2月の佐藤によるチッタゴン調査では、バンデル、マダルバリなどの清掃人地区を対象に,生活史、行動記録についての面接調査(11ケース)を行い、あわせてテレビ視聴状況について聞き取りを行った。 このように2005年度の調査は、これまでの調査研究ではつかめなかった新たな発見があり、2002年度から始まる清掃労働者をめぐる社会関係をさらに深く、多面的に把握することができた。
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