研究概要 |
平成14年度の研究実績は以下の通り. 1)文献レビュー:社会経済的因子と健康の関係,特に社会関係資本や相対所得仮説,首尾一貫感覚などに関わる文献をレビューした. 2)学会・研究会での情報収集・発表:social determinants of health conference(Toronto)に参加した.その帰途にProf.Kawachi(Harvard School of Public Health)を訪ね情報収集を行うと共に,今後の共同研究について協議し着手した.国内では,医療経済研究会や社会疫学研究会、日本衛生学会ワークショップなどで報告した. 3)政府統計の二次解析:検討した結果、手続きが煩雑なこと,すでに他の研究者が報告したこと、横断調査であること(他の縦断調査データ分析の目処がついたこと)から取りやめた. 4)縦断研究データの解析:二つの縦断研究データを用いた分析に着手した. (1)(財)家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査」(全国代表サンプルである29-39歳の女性約1200人が対象)を探索的に分析した.低学歴と離婚経験者などでうつが多いが、両変数を同時投入すると学歴の影響が消えることから,低学歴者にうつが多いのは離婚などが多いことを介しての現象であることが示唆された. (2)愛知県A町居住の65歳以上の全高齢者を対象としたコホート研究の分析に着手した.2000年に要介護でなかった者を対象に2年後の2002年4月時点の「健康寿命の喪失(死亡+要介護状態)」をエンドポイントとし,データの得られた2000人余りで分析した.「健康寿命の喪失」は、男性でオッズ比1.98、女性1.58と低所得層で有意に多く、低学歴では女性でのみオッズ比1.8と有意に多かった. 5)今後に向け、二つの縦断調査に変数追加を依頼し、ほぼ目処をつけた.
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