研究概要 |
(1)文献レビューと,(2)若年層女性と(3)高齢者の二つのコホートを用いた分析とその報告,および(4)高齢者の大規模コホート研究への着手,の4つに取り組んだ. (1)文献レビュー:社会疫学の先駆者の一人であるKawachi教授との対談や「公衆衛生」誌の連載論文などにおいて,社会疫学の到達点と研究課題についてのレビューを発表している. (2)若年層女性コホート:(財)家計経済研究所の「消費生活に関するパネルデータ」の(追跡開始時)24-34歳の女性コホート・データを分析し,2論文にまとめ発表した.主な知見は,心理的健康を従属変数とすると結婚歴と関連しており離婚・再婚経験者で健康度が低いこと,学歴が背景因子として作用しており,中卒で離婚・再婚経験者が多いこと,若い層でのみ未婚で既婚より健康度が低かった.一方,主観的健康観を従属変数とすると,やはり学歴と関連し,母子世帯,家事・育児時間が長いもので健康度が低かった. (3)高齢者のコホート:ある町の全高齢者を対象としたコホートで,2000年に要介護状態でなかった約2700人を2年間追跡し,健康寿命を喪失した(死亡+要介護認定を受けた)者の危険因子を分析した.高齢期においても,学歴や所得などが健康寿命の喪失と関連していること,その関連は健康行動の違いを調整しても残ることから社会経済階層による健康行動の違いでは説明できず,他の作用機序を考える必要があることなどが明らかとなった.発表リストには載せてないが,国際公衆衛生学会(4月,UK)に2演題がacceptされ,発表予定である. (4)高齢者の大規模コホート研究に着手:介護予防のための社会的心理的危険因子を明らかにすることを目的に,13市町村に居住する65歳以上の高齢者約3万人のbaseline dataを収集した.Social capitalなど地域レベルの因子と主観的健康感との関連の分析などに着手した.
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