研究分担者 |
馬場 康彦 明星大学, 人文学部, 教授 (90278317)
松田 亮三 立命館大学, 産業社会学部, 助教授 (20260812)
遠藤 秀紀 日本福祉大学, 経済学部, 講師 (10340283)
吉井 清子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (40340278)
末盛 慶 日本福祉大学, 社会福祉学部, 講師 (70387744)
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研究概要 |
主に4つの研究を行った. (1)「公衆衛生」誌の連載を中心に,文献レビューの成果を報告した.健康の不平等が世界的に関心を集めていること,社会経済的因子から健康への作用経路として,心理学的因子を経て,神経・内分泌・免疫学的に影響していること,個人の社会経済階層に加え所得格差など社会の特性も影響していること,などが示唆されている.一方,日本では実証研究が遅れていることなどを紹介した. (2)(財)家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査」データを用い,従来報告の少ない25-40歳の女性においても,主観的健康感や精神的な健康指標に,学歴や就労状況など社会経済的な因子による健康の不平等が見られること,その機序として離婚などの結婚歴が関与していることなどを明らかにした. (3)ある町の要介護認定を受けていない全高齢者約2700人を対象に,2年間追跡したデータを分析した.その結果,種々の社会経済的な因子が健康寿命喪失の危険因子であること,その機序として社会経済的な地位による保健行動の差のみでは説明がつかないこと,ソーシャルサポートの欠如でなくサポートを提供しないことやサポート授受のバランスを欠くことが危険因子である可能性などを報告した. (4)3.2万人の要介護認定を受けていない高齢者の横断データを分析し,2005年1月から12回にわたり連載中である.うつや主観的健康感を目的変数にした場合,これらが所得や教育歴と関連していること,農村と都市間の差や性差が少なからずあることを報告した.さらに,従来報告の(少)なかった歯科・口腔状態や転倒歴などの健康指標にすら,社会経済的因子による健康の不平等があることを明らかにしつつある. 以上,我が国にも社会経済的因子による健康の不平等が広範に観察されること,その影響経路の一部について明らかにし,論文や国際・国内学会で報告した.
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