研究課題/領域番号 |
14310106
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研究機関 | 京都精華大学 |
研究代表者 |
嘉田 由紀子 京都精華大学, 人文学部, 教授 (70231256)
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研究分担者 |
鳥越 皓之 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (80097873)
古川 彰 関西学院大学, 社会学部, 教授 (90199422)
松田 素二 京都大学, 大学院・文学研究科, 教授 (50173852)
鬼頭 秀一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (40169892)
宮内 泰介 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50222328)
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キーワード | ローカル・ノレッジ / 河川流域 / 琵琶湖 / 霞ヶ浦 / コモンズ論 |
研究概要 |
本研究は、現在激化しつつある日本国内や世界の環境問題を改善し、その人文社会学的な隘路を乗り越えるための社会システム的解決方法の確立に向けてのモデル構築を目指した。これまでの社会学、民俗学、人類学などが蓄積してきたモノグラフと、生活環境に関する文書や古写真データを、環境保全に関わる地域社会システムという観点で整理し、データベース化を行った。ことにこれまでの収集資料を有効に利用するため、河川および湖沼の流域社会を対象地域として1)本研究メンバーの研究を含む既存研究における、環境利用・保全等に関するローカル・ノレッジの資料を集積し、データベース化し、包括的な分析を行い、2)日本の河川流域(琵琶湖・霞ヶ浦)、森林部(熊野・北海道)を中心としたフィールドワークでの比較資料の収集を行い、3)これらの研究と併せて、中間技術を活かすことのできる、個別のコミュニティーを越える中範囲に適応可能な環境保全モデルを構築することを目的とした。 これらの作業をとおして、以下の3点が解明されてきた。ひとつは公共性論にかかわるところで、中間的なコミュニティが水域や森林などの資源管理を行う母体として成長するためには、当事者たちが納得する「正当性」と、制度的フレームの中での「正統性」の両者のズレを社会的に埋めることの重要性が指摘された。コモンズ論的にみると、かつての所有論が土地や水域などの平面的な利用と管理に集約されていた限界を事例の上から抽出し、生態的な多様性を反映した重層的コモンズ論の実践性が指摘された。第3には、環境のもっている対立的で多義的な意味(たとえば川をめぐる利水と治水)を、まるごと総体としてかかわる社会意識の形成が、中間的社会組織をエンパワーするための基礎的論理となることがわかった。
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