研究課題
基盤研究(B)
本研究は、前近代(中世末から近世期にかけて)日本において、識字能力がどの程度普及していたのかについて明らかにするために、起請文・宗門人別帳などにおける花押(自署サイン)を収集・分析するものである。このような資料は、中世文書および近世初期文書のみ見られるものであり、したがって調査地域は、このような資料を多く所蔵している近畿地域や東京都および九州地域が有力な対象となる。研究費交付後、まず獨協大学において識字研究会を発足させ、4年間の研究計画および本年における調査計画を立案した。年度ごとに、初年度は京都府および大阪府、2年度目は滋賀県および九州地域、3年度目は兵庫県および福井県、4年度目は東京都およびその他の地域を調査することとした。以上の計画に基づき、本年においては京都府における研究調査をおこなった。具体的には京都市歴史資料館所蔵資料の悉皆調査、京都府立総合資料館所蔵資料の調査などをおこなった。これらの結果、全世帯構成員の花押を記した近世初期の宗門人別帳、職人の花押資料、家数調査における花押資料、花押を有する中世期における起請文などが収集された。京都市歴史資料館の所蔵資料は膨大であり、本年における調査はまったく不十分なものに終わった。次年度においては、アルバイトの雇用を含め、抜本的な改善が必要となっている。また、中世文書のなかに当該資料が多数存在する手がかりを得ており、今後、これらの資料の調査方法を検討する必要がある。