ヒスパニック系のアートを中心に、民族的要素や文化的背景がアート表現及びアート市場とどのように関わっているかということについて資料収集及び、分析をおこなった。一口にヒスパニックといってもチカーノ、中南米からの移住者、キューバ系、カリブ海地域からの移住者の間で相違があり、また人種的要素もからんでくることがより明らかになった。先駆者として、メキシコ出身で欧米の芸術家たちとも交流をもち、土着的文化に関心を抱きつつ独自の世界をつくりあげ、現在チカーノの女性運動においてシンボル的存在となっておりますます評価が高まっているフリーダ・カーロや、キューバ出身で人種的に様々な大陸の血が混血しており、ヨーロッパでシュールレアリストたちと交わりがあったヴィフレド・ラムについての資料等も収集した。さらに、対象作家をしぼっていく過程で、キューバ出身でアメリカに移住し、ニューヨークのアクティヴィストたちとも関わった女性の写真家アナ・メンディエタに注目し、関連資料を収集するとともにバイオグラフィー、作品、評価のあり方等について分析を進めている。 これらと補完関係にある作業として、現代美術の動向と市場のあり方における民族文化という要素がもつ意味及び位置づけに関しては、理論的議論を中心に研究をおこなった。さらに昨年度のドクメンタに続き、大規模な国際展であるベネチア・ビエンナーレにて資料収集をおこなった。これにより、現代美術の世界においては言葉や概念がますます重きを得ていることが確認された。 また、インディオの写真家マルティン・チャンビについて作品と軌跡を人種、文化のヘゲモニー関係、越境性という観点から分析し出版した。
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