キューバ、メキシコ、ニューヨーク等で調査研究と資料収集をするとともに、ブラジルで開催されたラテンアメリカで最も重要な国際美術展サンパウロ・ビエンナーレで資料収集をした。キューバでは、キューバではヴィフレド・ラム・センターの学芸員にインタビューするとと同時に、タニア・ブルケラ、カルロス・ガライコア等、アメリカ合衆国と往復しながら数々の国際美術展に招待され作品を発表してきている著名なアーティストたちにインタビューをし、ビデオ撮影をした。社会主義政権下でアメリカの経済制裁をうけているキューバは、現代美術におけるローカリティとグローバル化の関係をみるうえで非常に興味深い事例を提供している。カストロ現政権は外貨獲得の手段として現代美術を利用しているが、他方で情報や物資の移動の制限をしている。こうした状況下で、アーティストたちはキューバ性と現代美術の国際的動きの狭間で模索していることが調査研究から明らかになった。また、国際展覧会ハバナ・ビエンナーレの開催は、国外にキューバのアーティストの存在を選別的に知らしめるとともに、国外の美術市場の動向を伝える役割を果たしてきていることが鮮明になった。さらに、ニューヨークで活躍していたキューバ系アーティストのアナ・メンディエタの来訪が、キューバのアーティストに現代美術の国際的な動向を伝える契機となったことも明らかになった。アナ・メンディエタに関してはニューヨークで回顧展が開催され資料収集をした。メキシコではオアハカで開催されたオアハカ出身のメキシコを代表するアーティスト、ルフィーノ・タマヨの名を冠した国際展覧会に行き、ラテンアメリカの大都市のみならず、地方都市と国際的な美術市揚及びアーティストがどのように結びついているかということを検証した。
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