研究課題/領域番号 |
14310150
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
渡辺 公三 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (70159242)
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研究分担者 |
スチュアート ヘンリ 放送大学, 教授 (50187788)
西 成彦 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (40172621)
江川 ひかり 立命館大学, 文学部, 助教授 (70319490)
澤田 昌人 精華大学, 人文学部, 教授 (30211949)
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キーワード | 土地制度 / 土地利用 / 習慣法 / 先住民権 / 共有地 / インディアン法 / 社会影響評価 / 環境史 |
研究概要 |
今年度の本プロジェクトでは、土地の問題を広い意味での環境と人間の関係にどのように広げて議論の枠組みを設定してゆくかという問題と、南北アメリカその他の地域における具体的歴史過程のなかで、土地をめぐる所有の問題、法体系の葛藤がいかにして歴史の動因となるかという、大きく二つの面から研究を深めた。 「環境」と生態をめぐる第一の問題については、公開研究会「伝統は近代を変えることができるか」において、生態学と人類学のインターフェイスで問題を考えておられる国立民族学博物館の池谷和信助教授、牧畜をめぐって生態と人間のかかわりを研究されている同博物館の小長谷有紀教授、本プロジェクト・メンバーでアイヌの居住地でのダム建設計画の環境アセスメントを担当している岩崎まさみ北海学園大学教授から報告いただいた。プロジェクト・メンバーでイヌイット社会の現地調査を長期間おこなっているスチュアート ヘンリ放送大学教授、生態学を専攻される遠藤彰先端総合学術研究科教授、マレーシアにおける伝統生態学的知識の継承を研究する政策科学研究科春山氏、イヌイットの伝統的生態学的知識を「野生の知」として追求する大阪大学の大村氏によるコメントを通じて生態学プロパーを含む多様な視点から検討を加えた。伝統的生態学的知の正確な環境認識とその継承の可能性が検討された。10月の第三回研究会の報告で池谷和信氏は、南部アフリカのカラハリ砂漠に居住するブッシュマンの調査成果をつうじて、強制移住後にも遊動狩猟民が環境との一定の親密な関係を保持すること、この関係の破壊の持つ意味が大きいことを論証された。京都大学アジアアフリカ地域研究研究科の分藤大翼氏もカメールーンの狩猟民を中心に民族誌に基づいて環境と人間の関係を研究する視点を再検討した。 第二の側面については、第二回研究会での報告者でこうしたテーマの先行研究『土地所有の政治史』の編集者でもある杉島敬志京都大学教授にインドネシア・フローレス島での継続的調査の成果から諸権利、政治権力関係のからみあいとしての土地-人間関係の歴史研究の一範例を提示いただいた。また第三回研究会でのプロジェクト・メンバー原毅彦氏はグアラニ社会の現状を、第四回の同じくメンバーの崎山政毅氏はメキシコ・チアパス地方における土地制度を、第五回の北海道教育大学、百瀬響氏は風俗・狩猟に関するアイヌの法体系統合過程の特徴を、現状、理論、歴史の諸側面から検討した。第三回の高村竜平氏「韓国・済州道における墓地に関する慣習とその変容について」は埋葬と葬礼の場としての墓地という土地の問題を、第五回の西成彦「土地の二重性/言語の二重性-中條百合子『風に乗ってくるコロボックル』を中心に」は文学作品の解析による先住民権理念の豊富化、深化というそれぞれ本プロジェクトでは十分主題化できなかった面にふれた。相互の視点を参照しつつ報告集をまとめている。
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