研究課題/領域番号 |
14310177
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桜井 万里子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (90011329)
|
研究分担者 |
澤田 典子 静岡大学, 人文学部, 助教授 (50311650)
周藤 芳幸 名古屋大学, 文学部, 助教授 (70252202)
逸身 喜一郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40107420)
|
キーワード | ポリス / ギリシア / キプロス / 東地中海 / 異文化交流 |
研究概要 |
「なぜポリスは紀元前8世紀のギリシアで形成されたのか」という問題を東地中海という大局的な視点から捉え直す一環として、本年度はキプロスに焦点を当てた。現地調査により、キプロスには新石器時代以来固有の文明が栄えた一方で、フェニキア人やギリシア人が移住して各地に共同体を作って異文化交流の一大センターとなっていたこと、及び銅や香料などの輸出、陶器の輸入、エジプト産穀物の中継貿易などの経済活動を通じ、ギリシア本土にその影響が及ぼされたことが確認できた。 ミケーネ文明と前古典期以降の文明との間に断絶が見られるギリシア本土と異なり、キプロスでは青銅器時代以降の時代にもギリシアのミケーネ文明の影響が継続して見られ、さらにキティオンを中心とした地域へのフェニキア人の移入によって独自の文化圏を形成したことが考古学的知見から読みとることができる。古典期には島の東岸にギリシア系のサラミス、南岸にフェニキア系のキティオンがともに有力な都市として栄えるなど、島内にギリシアとフェニキアの文明が併存していたことがわかっている。彼らはともに商業活動のためにギリシア本土と盛んに接触し、双方向の文化の伝播に少なからぬ役割を果たした。たとえば宗教的にはフェニキアの主神アスタルテがキプロスを通じてアフロディテ・ウラニアとしてギリシア本土へもたらされる一方で、アテネと銅の交易で強いつながりを持っていたキプロスの東部や山間部ではギリシアのアテナ女神が崇拝されていたことがわかっている。この地でギリシアと東方、特にフェニキアの文明が接触、融合した様子を看取することができた。
|