研究課題/領域番号 |
14310184
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小杉 康 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (10211898)
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研究分担者 |
加藤 博文 北海道大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (60333580)
山崎 京美 いわき短期大学, 幼児教育科, 助教授 (60221652)
富岡 直人 岡山理科大学, 理学部・生物化学科, 助教授 (90241504)
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キーワード | 有珠6遺跡 / 小幌洞窟遺跡 / 後氷期 / レーザー測量 / AMS / 古環境 / 有珠山山体崩壊 / 縄文早期 |
研究概要 |
本研究は、噴火湾岸域の有珠6遺跡(北海道伊達市所在)の発掘調査と周辺遺跡群の分布・測量調査を実施し、過去1万年間における自然環境の変動、特に火山活動と海水準変動と、それに対応して繰り広げられた人類の適応活動の実際の様相を復元的に解明するものである。 本年度は野外調査としては、伊達市有珠6貝塚の発掘調査と豊浦市小幌洞窟遺跡の測量調査とを実施し、室内調査としては発掘資料の整理・分析と測量調査のデータ処理を実施した。有珠6遺跡発掘調査・資料分析の目標は、(1)有珠6遺跡の貝層の最下底部まで発掘を進め、貝塚形成開始の時期と当時の地形環境を復原する、(2)貝塚が形成された岩陰を形成する岩塊(岩山)全体をレーザー測量し、これまで実施してきた周辺地形の測量成果とを統合する、(3)岩塊西側斜面を発掘調査し、当時の日常的な生活空間を探索する、(4)AMS年代測定用のサンプルを採取し、貝塚の形成年代と遺跡が残された丘陵を形成した有珠山山体崩壊の年代とを明らかにする、(5)貝層の柱状サンプルを採取して構成貝種の変動を明らかにする、以上である。(1)については、貝塚の形成時期は縄文早期中葉の浦幌式並行期まで遡ることが確認でき、本貝塚が北海道域における最古級の貝塚であることが判明した。(2)および(3)については、岩塊の西側にかつて大規模な岩陰があり、貝塚が形成された縄文早期から前期にかけて、さらには縄文中期、晩期と断続的に使用されていたことが判明した。この岩陰は現在では裾部の一部しか残存していないが、それが戦時中に室蘭築港の際に削岩されたためであることも明らかにできた。(4)については、貝層形成開始年代として7895±35(yrBP±1σ)、丘陵最上層の年代として12240±40(yrBP±1σ)という結果を得られた。これによって、有珠山山体崩壊の従来の年代観(7000〜8000年前)を大幅に修正する可能性が高まった。(5)については作業量が膨大なため現時も続行中であるが、オオノガイが棲息する環境からカキ類が主体となる環境へと海浜環境が変化する様相が明らかになりつつある。
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