本研究は中世段階の琉球列島に広く分布する硬質陶器である類須恵器について、出土遺跡の分布と生産地である徳之島カムィヤキ古窯跡群の出土資料について分析し、その歴史的位置付けについ明らかにすることを目的とする。 研究期間3年間の初年度にあたる今年度は、類須恵器について、生産遺跡と消費遺跡の双方で、資料存在状況の確認を行った。まず、消費遺跡については、琉球列島の奄美諸島、沖縄諸島、宮古諸島、八重山諸島に関する考古学的調査報告書・研究書の中から、類須恵器出土遺跡約350遺跡の出土地名表を作成し、その上でほぼ完全な形を保っている資料について、実見調査を行った。また、生産遺跡である徳之島カムィヤキ古窯跡群については、同窯跡群が所在する徳之島伊仙町教育委員会の協力を得て、カムィヤキ古窯跡群出土資料の保管および保存状況の確認を行った。さらに、カムィヤキ古窯跡群については、現地における追加分布調査と、地磁気測定法や電気探査法などの物理学的な手法に基づく調査を行ない、これらを用いた窯跡探査方法の有効性について確認した。 このような国内での調査に加えて、生産技術の上で類須恵器との関係が注目される韓国高麗時代無釉陶器については、韓国畿甸文化財研究院の協力を得て、京畿道龍仁郡竹田高麗陶器窯跡群出土資料の実見・観察を行ない、類須恵器との間における技術的共通性などについて検討した。また、韓国陶磁史研究者である梨花女子大学校博物館学芸室長羅善華氏を徳之島カムィヤキ古窯跡群へ同行いただき、韓国における陶器窯跡群とカムィヤキ古窯跡群について、窯構造や製品群の比較検討を行なった。
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