本研究の目的は中世段階の琉球列島に広く分布する硬質陶器である類須恵器について、出土遺跡の分布と、生産地である鹿児島県徳之島カムィヤキ古窯跡群の出土資料について分析し、その歴史的位置付けについて明らかにすることである。 3年間の研究期間の2年目である今年度は、徳之島伊仙町教育委員会が実施したカムィヤキ古窯跡群の物理学的探査に参加したのをはじめ、各地から出土した類須恵器のなかで、比較的完形に近い資料について、写真撮影と資料観察を行なった他、類須恵器と伴って出土することの多い、滑石製石鍋およびこれを模倣した滑石混入土器の出土地名表をまとめ、これについての文献資料の収集を行なった。 カムィヤキ古窯跡群での物理探査では、現在12支群とされる窯跡群について、窯跡が存在する可能性が高いと推測される範囲を選び、フラックスゲート磁力計およびプロトン磁力計による磁気探査と、電気探査を行なった。この結果、およそ12.000平米の範囲から100基あまりの窯跡の存在が想定される結果を得た。また、この際には各支群の中で、遺物の散布が著しい地点30箇所あまりを選び、陶器片および窯道具類を採取し、その実測と写真撮影を行ない、資料化を図った。 完形品の写真撮影と資料観察については、奄美群島の資料を中心に行なった。奄美群島には約30例ほどの資料があり、これらについては、基本的に伝世品として扱われている。このため、出土遺跡や年代などが明確でない資料も多いが、完形であることによって、製作技法や法量などの情報を得ることができた。 滑石製石鍋およびこれを模倣した滑石混入土器については、沖縄島およびそれ以南の先島諸島で検出された例が多い。しかし、奄美大島名瀬市フワガネク遺跡からも大量に出土している。これについては、当遺跡が滑石製石鍋やこれを模倣した滑石混入土器の製作と分配に深く関わった可能性が考えられる。滑石製石鍋やこれを模倣した滑石混入土器の生産と流通は、類須恵器の生産と流通を解く上で、極めて密接な関係をもつことが考えられる。
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