本研究では、イスラエルにおいて日本隊(聖書考古学調査団)が発掘調査を継続しているエン・ゲブ遺跡について、調査・研究を深め、周辺地域の事例との比較検討を通して、地域の歴史の中に位置づけることを軸にして研究を進めている。今年度は、昨年度に引き続いて、遺物や遺構の図面、写真、台帳など、調査記録の基本的な整理を進行させ、図面のデジタル化を重点的な課題として、遺構図面についてベクタートレース作業を推し進めた。 6月には、桑原が「南レバント鉄器時代の都市の建築-エン・ゲヴ遺跡の位置づけをめぐって」として、西アジア考古学研究会第9会大会にて、本研究の成果を受けた発表を行った。 7月末から8月にかけては、桑原(研究代表者)、置田(研究分担者)がイスラエルに渡航して、エン・ゲヴ遺跡の第8次発掘調査に参画し、遺跡アクロポリス部において、列柱式建物の基本構造の解明にあたったほか、昨年度判明した城壁コーナーのタワーについて、平面プランを明らかにした。また、土器や石製品など、エン・ゲヴ遺跡の出土資料を図化、撮影する作業も合わせて行った。さらに、ダン、ベト・サイダ、ハツォール、テル・キンロット、テル・レヘシュなど、周辺の関連遺跡を踏査した。 秋期から冬期にかけては、上記したエン・ゲヴ遺跡の調査記録の整理作業並びにデジタル化に重点的に取り組んだ。 春期には、3月6日、置田・桑原が、本研究の成果を受けて、東京で開催された西アジア発掘調査報告会にて、報告を行った。3月末には、桑原ほか研究協力者5名がイスラエルに再渡航を行い、エン・ゲヴ遺跡の出土資料を図化、撮影する作業に従事した。また、モシェ・コハヴィ氏(テル・アビヴ大学名誉教授)、イツィク・パス氏(テル・アヴィヴ大学)とともに、テル・レヘシュの踏査を実施し、今後の同遺跡の調査について検討を行った。合わせて、エンゲヴ遺跡の報告書出版について協議した。
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