本研究では、イスラエルにおいて日本隊が発掘調査をおこなったエン・ゲヴ遺跡について調査・研究を深め、周辺地域の事例との比較検討を通して、地域の歴史の中に位置づけることを軸として研究を進めてきた。 今年度は、2004年にエン・ゲヴ遺跡の発掘調査が終息したのを受け、最終報告書の刊行をめざして、遺物や遺構の図面、写真、台帳など、調査記録の整理を集中的におこなった。 また昨年度より、当地における鉄器〜青銅器時代の都市・建築構造のさらなる追求を目指して、新たな調査対象を模索していたが、有力候補地が下ガリラヤ地方に所在するテル・レヘシュに絞られたのを受け、関連資料の収集にあたるとともに、各方面との折衝などの準備作業をおこなった。 テル・レヘシュは、長軸350mの未発掘の本格的なテル型遺跡であるが、前期青銅器〜鉄器時代の都市遺跡であることが示唆されていた。そこで、8月に現地に渡航し、予備調査として、イスラエル考古局の許可を得て、エン・ドール博物館に保管されている採集資料の調査をおこない、実測、写真撮影などをおこなうとともに、イスラエル考古局を訪問し、ライセンス取得についての打診をおこなった。8月には、合わせて、東地中海地域における鉄器時代の都市や建築遺構の比較研究をおこなうため、鉄器時代の神殿遺構で知られるキティオン(キプロス島)などを踏査し、関連資料の収集にあたった。 10月には、イスラエル考古局にテル・レヘシュの発掘調査の正式な申請をおこなったが、幸い、2006年について、同遺跡の発掘調査のライセンスを日本隊として単独で取得することができた。11月には、テル・レヘシュの本格的な調査を前に、現地協力者であるイツィク・パズ博士の来日に合わせて、天理大学でイスラエル考古学研究会を開催し、テル・レヘシュについての研究を深めた。
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