研究概要 |
2002年度の研究計画に基づき、各研究分担者は資料収集を行うと同時に、さらに一歩研究を進め、具体的に各自の分担領域の仕事に取りかかった。 佐々木は7月、University of London, Institute of English Studiesで開催された"A Man for All Media : The Popularity of Dickens 1902-2002"という国際学会で司会を務めたが、これはエドマンド・ウィルソンのディケンズ論を再検討するのに大いに寄与するものである。また、ロンドン滞在中は関連する資料収集にあたった。論文「チェスタトンのディケンズ論」もやはりウィルソンのディケンズ論を比較・検討するための基礎作業である。 中村は12月、University of California, Santa Barbaraの図書館でウィルソンと深い親交のあったウラジミール・ナボコフの書簡を閲覧すると同時に、サンタバーバラでのウィルソンの文学的経験・活動の跡を調査をした。論文「エドマンド・ウィルソンの読んだメルヴィル」は本研究の具体的成果の一つである。 若島は『ナポコフ=ウィルソン往復書簡』の翻訳を精力的に進めていて、その中で行われている文学論争を中心にウィルソンの批評の核心に迫ろうとしている。論文「電子テキストと『ロリータ』」はウィルソンの批評研究のデータベース構築を行うにあたり、その文学研究上の問題点やメリットを、ナボコフの作品を例にとって、具体的に考察したものである。 以上、3人はそれぞれの分担領域で着々と研究を進めており、その成果として来年度はウィルソンの文明論集、文学論集の翻訳出版を予定している。
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