研究概要 |
各研究分担者は次の研究を行なった。また、全体会議を4回開催し、その都度、研究成果を交換しあった。 (大津) 日本語の直接受身と間接受身の獲得を実験的に調査し、文文法外の要因をコントロールすると、その獲得は従来考えられているよりもずっと早く、3歳代で完了することを明らかにした。この結果は、普遍文法の原理が関与する限り、文法の獲得はきわめて早く、とりわけ移動が関与しない部分については最小限の経験の取り込みで十分であることを示している。この実験研究に加えて、言語心理学、とくに第一言語獲得研究の現状とその問題点を整理した。 (今西) 認知体系内で言語機能と接する音声・音韻構造、論理・意味概念構造、情報・談話構造等の特性を詳細に考察し、言語獲得機構がこれらの構造を介して他の認知体系とどのように係わり合うかを探究することが普遍文法研究の進展に重要な貢献をなすという視点にたち、統語部門と音韻部門、統語部門と意味部門、それぞれのインターフェイスの特性と深く係わる多様な言語事象を言語獲得過程に焦点をあてて研究を行った。 (石居) 日本語の文構造の階層性を示す証拠として提案されているもののうち,安定した反復可能性のある資料を提供できるものにどのようなものがあるかを吟味・再考した.関連して,日本語は純粋に文法的な機能を果たす機能範曙に乏しく,英語で機能範疇を用いるような場合でも語彙範疇を用いるということがあり,意味・語用論的要因によって決まる依存関係が英語などの言語に比して多いという可能性を,日英語における数量や程度の表現方法の違い等を中心に探った.
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