研究概要 |
各研究分担者は次の研究を行なった。また、全体会議を4回開催し、その都度、研究成果を交換しあった。 (大津) 今年度はMike Tomaselloらによって展開されている生成文法の言語獲得理論批判について、これまでの研究成果を基盤として、検討を加えた。その結果、Tらの批判にもかかわらず、言語獲得において刺激の貧困が存在するという生成文法の言語獲得理論の根幹部分はその妥当性を失っていないこと、および、普遍文法の原理が関与する限り、文法の獲得はきわめて早く、とりわけ移動が関与しない部分については最小限の経験の取り込みで十分であることが実証的に明らかとなった。この研究に加えて、言語心理学、とくに第一言語獲得研究の現状とその問題点の整理を継続した。 (今西) 認知体系内で言語機能と接する音声・音韻構造、論理・意味概念構造、情報・談話構造等の特性を詳細に考察し、言語獲得機構がこれらの構造を介して他の認知体系とどのように係わり合うかを探究することが普遍文法研究の進展に重要な貢献をなすという視点にたち、統語部門と音韻部門、統語部門と意味部門、それぞれのインターフェイスの特性と深く係わる言語事象として,(1)照応表現および(2)問い返し疑問に関して,主に日英語の資料を詳細に分析し、比較統語論的観点から普遍特性と変異特性を明らかに,それらがどのような言語獲得過程の帰結であるかを考察した。 これらの研究により、心のモジュール性の実態と心における言語機能の位置づけがこれまでよりも明確となった。本研究は今年度が最終年度であるので、現在、研究報告書の作成に向けて現在、執筆、編集の作業中である。
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